リュック・ベッソンの作品で一番好きな映画
目次
ぐんぐん引き込まれる独特の世界観
リュック・ベッソンの作品の中では「レオン」が一番有名どころだと思うけれど、私はこの「フィフス・エレメント」が同じくらい好きだ。その独特の世界観や特徴のある登場人物、SFエンターテイメントのツボを押さえたような展開全てにワクワクさせられる。宇宙船(この宇宙船のデザインがまた奇抜で素晴らしい。内臓のようにも蛹のようにも見えるそれはストーリーに対する期待をかきたてられる)に乗ってやってきたモンドシャワン人のその奇妙な姿(一目見たときに、あれじゃ走ったりはできないなと思ったのだけど、それは壁にはさまれて鍵を残すための伏線なのかと思った)や、そこから300年後になったときの世界の風景や、すべてにSFらしいエンターテイメントがたっぷりと詰まっていて、どんどん映画の中に入っていってしまう。コーベンの部屋もいい。あの無駄(あえてそういってしまおう)に未来感を感じる作りは、子供に今から300年後を想像した絵を書いてみましょうといったら書くような作りで本当に楽しい。冒頭からそういった始まり方なので、否応なくストーリーに引き込まれていく。
あと個人的に好みなのが、何語でもない言葉を話すがでてくるところ。ミラ演じるリールーがコーベンのタクシーに落ちてきてすぐにその言葉で必死に状況を説明するところとか、チキンを食べながら何か言っているところとか、あのあたりがかなりツボに入る(だからこそ、リールーが英語を操れるようになってからは若干その魅力が半減したように思う)。なんの映画でもそういうところがあるとついつい見入ってしまうのだけど、この映画では特にそんなシーンが多くてそれも好きなところだ。
ブルース・ウィリスの演技力
ブルース・ウィリス演じるコーベン・ダラスもいい。ブルース・ウィリスは「ダイ・ハード」シリーズにより何となく肉体派のようなイメージがあるが、実際彼はそれほどの筋肉キャラでなく、演技派だと思う。それが一番感じられたのは「ストーリー・オブ・ラブ」(邦題ではこうなっているけど、絶対原題の「Story Of Us」の方がいいと思う)での彼の演技だ。普通の男性の普通の生活を、観る側に退屈感を感じさせずに演じるというのは相当の演技力が必要だと思う。この「フィフス・エレメント」でもそのような彼の演技力が遺憾なく発揮されていた。「ストーリー・オブ・ラブ」とは違うけれど、なにかこう堕落したような雰囲気を醸し出しながらも時々その強さを隠しきれないところとか、猫が好きなように女性に弱いところとか、ヒール感のある善人というか悪人になりきれない善人というか、そういった雰囲気をうまく演じている。
そしてこの時代の彼は申し分なくかっこいい。今が悪いとかでなく(彼はいい年のとり方をしている俳優の一人だと思う)、やっぱりブルース・ウィリスかっこいいわと再確認できる映画でもある。
ミラ・ジョヴォビッチの演技力とその可愛らしさ
再生されてすぐ強化ガラスを破る寸前に見せた表情や、追われながら出たトンネルの先が飛び降りるしかない状況だったときの表情や、コーベンのタクシーに落ちた後の彼女の邪気のない笑顔とか、初めて食べる食べ物のシーンとかその食べ方とかすべてがすごい。彼女はどうしても「バイオハザード」シリーズのイメージが強いと思うが、私はこの「フィフス・エレメント」での彼女が一番好きだ。「バイオハザード」シリーズでは彼女の強さと美しさだけが強調されたように感じたけれど、この映画の彼女は本当にかわいらしい。「バイオハザード」シリーズからの彼女は強すぎるというイメージが定着してしまって、「フェイシズ」や「サバイバー」でも強いから大丈夫と思ってしまったりする。でも「フィフス・エレメント」での彼女はまだ若いからか幼さもあり、強さも備えながらも傷つきやすい脆さを感じさせて、ついつい感情移入してしまう。あんなにかわいらしいミラ・ジョヴォビッチを観ることができるのはこの映画だけかもしれない。
またそしてあの予告にもなっていた壁から飛び降りるシーン。あの飛び降りる姿勢が若干傾いているのがリアルでいい。あの状況であまりにきれいに飛び降りることなどできないし、だからこそあの体勢にリアリティを感じる。好きなシーンの一つだ。
驚異の歌唱力の美しさと対照的に見せるリールーのアクションシーン
「フィフス・エレメント」ではあまりにも有名な、抜群の歌唱力をもつエイリアン。彼女が体内に石を隠していたので結果的には彼女は殺されてしまうのだけど、それまでに見せる彼女のオペラは本当に素晴らしかった。荒々しいコーベンでさえ椅子に釘付けにし動けなくなるほどそれは、映画の中で聞く音楽の中では最上級のものだと思う。私もコーベンと同じく、クラシックやオペラなどにはあまり明るくないのだけど、なんの知識もなくてもあの歌声がすごいというのは誰にでもわかる。そしてそれと同時に進むリールーのアクションシーンはかなり印象に残る。展開は荒々しいのにバックで美しい歌声が流れるというのはイメージと正反対のものだから頭に残りやすい。よくあるのが、戦争での激しい銃撃戦で人がどんどん死んでいくのにアヴェマリアのような美しい音楽が流れたりするような、荒々しい映像なのになにか切ないような儚いような、そんな印象を受けた。そしてもちろんこのあたりはこの映画を代表する映像だと思う。
クリス・タッカーのコミカルな演技が映画のスパイス
彼の演技は「ラッシュ・アワー」で初めて見た。(「フィフス・エレメント」はDVDで観て「ラッシュ・アワー」は映画館で見たので上映の順番は違うのだけど。)そのコミカルで、でもそれの度がすぎないちょうどいい演技は印象に残っていた。コメディ映画はその度合いが過ぎるといたたまれなくなって観れなくなってしまうのだけど(私にとっては「Mr.ビーン」や「オースティン・パワーズ」などがそれにあたる)、彼の演技はそういうのでなく俳優とコメディアンの違いを感じた。
この映画では彼はまあまあ女性的な話し方や動きなのにスチュアーデスには行動的であったりと、どういう人なんだろうという興味をもたせる。またあの奇抜なスタイルはきっと彼でないとしっくりはまらないだろう。最近彼を観ないのは少し残念に思う。
そういえば彼は昔テレビのバラエティに出ていたような気がして調べてみたら、やっぱり日本テレビの「ごちになります」に出ていた。詳しいことは忘れたけど、かなりのインパクトがあったことを覚えている。DVDでもあれば一回見てみたいような気もする。
脇役ながらも豪華なキャスト
モンドシャワン人に忠実な神父をイアン・ホルムが演じているが、彼は「エイリアン」で不気味なアンドロイド役で、その気持ち悪さを今でも覚えている。反面「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズでのビルボ役では、冒険心旺盛ながらも慈愛深い演技が印象的だった。
悪役としてでているゲイリー・オールドマン。彼が出るとやはり映画が締まる。時にその演技と存在感が重過ぎて映画がひっぱられているような気がするときもあるけれどやはりその存在感は圧倒的で、この悪人ゾーグを見事に演じている。一見穏やかにみせかけて冷徹で、自身の悪運さえ他人のせいにしそうな、そばにいるといつ殺されるのかわからない恐怖感をうまく醸し出している。
第五の要素の解釈
初めてこの映画をみたときはリールー自身がフィフス・エレメントなのかと思ったのだけど、そこにコーベンとの愛がなければ成立しえないものなのだろう。でも第五の要素が愛というには少しわかりにくいようにも思う。解釈に幅を持たせるためのあえてのものかもしれないが、個人的にはもっと明確にして欲しかった。コーベンの言った「地球には救う価値もある美しいものもある」という言葉。妙に心に残る。そこからエンディングに向かっては若干軽い印象もあるが、決して悪くない。
スタイリッシュな映画ではあるのだけどそれだけでないなにかがこの映画にはある。だからこそ何度も観てしまうのだろう。
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