浩介からみた陽だまりの真緒
この映画のテーマ
最後に真緒が猫であると知り、それを受け入れた浩介の気持ちがこの映画のすべてではないかと思います。愛するということは、その人の全てを愛することであり、見た目や種類ではない。
猫の真緒でも真緒なんだと、それでも好きなんだと受け入れた浩介の想いが私は大好きです。
浩介が真緒は猫なの?と気がついたとき、猫の真緒に驚くよりも、真緒がいなくなったことに驚く浩介は本当に真緒のことを愛しているんだなと感じます。
愛の表現
この映画は直接的な言葉は一切出てこない。
「愛してる」「好き」これらの言葉はなく、行動や雰囲気、態度そして間接的な言葉で二人の愛が表されている。
真緒が隣の家のしゅうくんに「まだ痛いのが嬉しいの」と言った台詞に胸が痛くなりました。
真緒は自分の命の短さを知っている。だから、まだその痛さを味わえることが嬉しい。そんな真緒にも愛が伝わってきます。
また浩介もいなくなった真緒をみつけて浩介が真緒に「お前ブライアン食ったろ」と声をかけるシーンには救われたような気持ちになりました。
この言葉には浩介のすべてがつまっている気がします。猫だったんだねという気持ちとそれを受け入れるよと浩介の精一杯の愛してるだと私は思います。
また、音楽も陽だまりのようでぴったりでした。
山下達郎の光と君へのレクイエムの歌詞は浩介の気持ちを歌っている。
「ずっとずっとあのままの二人でいたかった」
と繰り返されるこの歌詞。浩介の素直な気持ちだなと思います。エンディングに流れる中これを聴くと胸がいたくなります。
「君の好きだったあの歌は今もこの街で流れ続けている Wouldn't it be nice!」
ここの歌詞にもグッと来ました。
歌だけは残っている。流れ続けている。悲しさもあるけど、Wouldn't it be nice!素敵じゃないかと歌っている。歌だけでも残っている、素敵じゃないかということだと思います。
このように、間接的な言葉をつかっていることで愛の重みがわかる気がします。
二人の記憶
真緒との別れが近づくとき、真緒の物や二人の思い出が流れ一つずつ消えていくが、浩介の手にある昔、猫の真緒につけられた傷が残っていた。
これは真緒との出会いは消えていないということ。
二人は確実に出会っている。
初めて本編をみたときは、浩介は真緒のことを忘れていたと思っていましたが、何回もみるうちに実は浩介は真緒のことを覚えていたんじゃないか?と思いました。
バーのシーンでは、同僚の女の子に「なかなか奇跡は起きませんね」と言われ「起きないねえ」って言ってる浩介はなんだか真緒との出会いを言っているように感じました。
真緒と別れてからの浩介はなんだか…地に足が着きすぎているというか、大きな壁を乗り越えてきた、愛する人がいる、という感じにみえました。いつか出会えることを信じて待っている、そのための「起きないねえ」だったのかなと思います。
そんな地に足が着きすぎている浩介でも、バーでWouldn't it be niceをきき涙を流したのは、気を張っていたのがふいにとけた瞬間だったのかなと思いました。
涙を流し、フッと笑い、また涙をこらえる
別れてから浩介が感情をあらわにするシーンに心が痛いです。
そして最後に真緒らしき?人物と出会う。
ここでも浩介は、とても優しい笑顔で「はい」と返事をします。まるで現れるのを待っていたかのように。
普通の浩介ならわたわたしそうなのが、あんなにもどっしりして、穏やかに笑うなんて真緒を覚えていて待っていたようにしか見えませんでした。
その女性が猫の真緒なのか、真緒がつれてきてくれた浩介が出会うべき女性なのか、猫の真緒が人間となって現れたのか。
わたしは人間となって現れた真緒であってほしいと願います。
その女性が首から下げていたのは明らかに浩介との結婚指輪であった。
最初から最後まで、悲しいシーンでさえ、温かく見えてしまう。陽だまりマジックです。
脇の愛
また浩介や真緒だけでなく、二人に関わる人たちからも愛が感じられました。
真緒が猫のとき住んでいた家にいる老婆のところに浩介が行った時、「今日の陽は長いといいなあ」と老婆が言ったこの台詞。
陽とは真緒のことではないかと思いました。
陽だまりの陽と太陽の陽をかけて、長いといいなあと。
今日が終わるということは真緒も終わるということ。どちらも長いといいなあと。
老婆はなにもできないと言っていたが、真緒の愛する気持ちにも愛を持っていたんじゃないかと感じました。
そして、真緒がいなくなり、浩介が駅で真緒の両親とぶつかるシーン。
猫を買い始めたという真緒の両親は、その猫にマオと名付け、浩介を見て、一瞬、あれ?という顔をする。
浩介と同じように真緒を愛していたからこそ、感覚的な何かを覚えていたのかなと思う。
たくさんの伏線が散らばっていて、とても感情を揺さぶられる。
愛とはなにか、とても考えさせられる作品でした。
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