バトルマンガの王道として楽しめるストーリー
魔導具ってまさに子どもの夢です
烈火の炎といえば、あらゆる属性の魔導具が登場することが魅力です。主人公烈火の炎は炎術士としての能力ですが、風子の風神、水鏡の水・氷を司る閻水、土門の土星の輪、小金井の機械的な鋼金暗器、そして柳の治癒という力(ヒーラー的役割)…王道なんですが、必要なところだいたい網羅できちゃってますよね。
ところがそのありきたり感がない、それぞれの魔導具の技が…いいんですよ!!烈火の炎が連載されていたころの中では、ダントツ楽しい・かっこいい技だったと思います。最初はとても未熟なんだけれど、お互いが成長して強くなっていくのもいいし、技を表現するイラストが素敵で「自分もこんな能力ほしいー」と思ったものです。
大きく分けると、①炎を何となく操れる高校生が紅麗という同じ能力を持つ人間との出会いで戦いに身を投じることが決まるまで、②裏武闘殺陣という死闘を繰り広げる大会に出場し、紅麗との決着のために奮闘する、③裏で暗躍していた森光蘭と戦い、奪われた柳の奪還のためSODOMに乗り込み最後の勝負に挑む…という3パートほどが大きなところです。その段階ごと、仲間が増えたり、強くなったりしていくわけですが、武器と対話するって…なんかいいですよね。使う道具も自分の仲間。野球グローブも使い込めば使い込むほど自分の手に馴染んで自分だけのモノになる。モノは大事にしましょうね。
登場人物1人1人のストーリーが楽しすぎる
なんといっても、ストーリーですよね、烈火の炎は。最初から最後まで楽しかったし、無駄なく全部語りつくされた感がありました。全33巻という中で、それぞれの武器と技、そのエピソード、人間模様が本当に素敵でしたね。烈火の出生に関すること、陽炎が烈火の母親であること、紅麗も時代を越えてきたこととかはしっくりとくるし、終わり方も希望があって…よかったです。本当によかった。戦国時代でもう一度生きるとか、かっこよすぎですよ。完全な悪設定の森光蘭がいてくれたので、紅麗のことを正当化できましたしね。
個人的にはやっぱり小金井ですよね。あのジョーカーとのやり取り。最高でした。武器もよく似合ってるし、やはりパズルが天才的な子っていうのは身長低い小柄ないじわる大好きタイプが適してます。ジョーカーがなんで敵なんだー!と思ってしまったときもありましたね。最終的には共闘みたいな感じですけど、あんな終わり方って…あっていいんでしょうか。麗は確かに悪っぽい集団だったけど、紅麗を慕う気持ちっていうのは素敵でしたね。結局、完全な悪は全部自分のことしか考えてなかったりしますから、誰かを思いやる気持ちが垣間見えると、完全に白黒つけれないじゃん…って思うんですよね。世の中正しいことなんぞどこにあるのやら。(笑)
ストーリーが進んでいく中、それぞれに魔導具の対となるモノを操る相手と対峙するので、それもわかりやすくておもしろいポイントだったと思います。もちろん、大会なので全部の戦いすべてを勝つわけでもなくて。負ける戦いもあってその負け方がまた…感動的だったりして。ただじゃ負けない、ただじゃ勝たない、いいなーーーと思います。
色恋がちょっとあるのも嬉しいところ
柳と烈火はもちろんのこと、風子と土門と雷覇もあり、水鏡や小金井のちょっかいもあり、そして紅麗と紅のせつないせつないお話…そこに音遠…紅麗はとにかく最後の最後までせつなさを残していきました。水鏡は完全に姉さんに重ねてただけなので、あとは単なる烈火へのライバル意識だけだったと思います。
一番罪な奴は風子じゃないかと思いますけどね。ここだけ少女マンガの世界でした。バトルマンガですから大きくは目立たないですけど、風子視点でだけ見たら少女マンガでしたね。はじめは烈火という自分のことを助けてくれた人を大切に大切に想ってきて、その恋が横から出てきた柳によって終わってしまう。はじめは反発して、自分の気持ちをどうしたらいいのかって悩むんだけど、でも自分を大切にしてくれる人が近くにいて、支えてくれて、違うところで軽く三角関係すら勃発。そして幸せを見つけちゃうんですから。少女マンガ好きとしては期待を裏切らない感じ、ごちそうさまでした(笑)。敵味方を問わずって…まあ雷覇は対の武器の相手でしたから、ちょっと種類は違ってきますけど、それにしても雷覇はおいしい展開を作りましたね。一方で主人公烈火は順調に進んでいくことが予想できたので、うん、満足。
ラストが嬉しい
ラストの柳と烈火がついに会えて一緒になれたときは、感動的でしたね…いったんは紅麗と同じで、愛しい大切な人を炎とする桜火の不死鳥の炎で柳は炎の化身となりました。守ってもらってばかりだった自分が、一緒に戦える…!!っていやーーー素敵です。ここで一番すごいと思うところは、「天堂地獄という存在が、癒す炎で朽ちていく…」というストーリー展開です。それって魅力的じゃないですか?ぶっ壊すとか焼き尽くすとかじゃなくて、癒すことが朽ちることになるっていうのが、救済とも思えるし、悪が倒れるときにも癒しが使われるなんて設定がドラマティックですよね。
そして炎となってしまった柳が、天堂地獄をこの世から葬るという役割を魔導具たち・火影の炎が終えたことによって、元通りに肉体に戻る…よかったよ…柳を炎にすること、辛い辛い決断を乗り越えて感動のハッピーエンド。嬉しかったです。紅は肉体がないから…紅麗は最後まで悲しかった。でも全部が幸せだったら、幸せの価値なんてわかりません。烈火も紅麗という存在のおかげで存在できていた。これは間違いないし、全部のキャラクターが必要不可欠でした。
ラストちょっと前に、SODOMで陽炎さんが「傷が治らない…」ってなったところは感動的でしたね。これから歳を取って生きていけるんだって。ただここでしみじみ考えてしまったことは、不老不死ってどんな気持ちなんだろうっていうこと。終わりがなければすべてを楽しみ切ることができるのか、はたまた何もがんばれないでただ存在していくのか。どっちがいいのかは、わからないけれど、時間が無限だという世界に興味を持たずにはいられません。
絵はだいぶ変わりましたね
一番の変化はイラストの違いですよね。1巻と33巻じゃ全然綺麗さが違います。魔導具の技や主人公たち自身の成長も、巻が進むにつれてどんどん進んでいきますから、イラストが神がかってきたのと合わさって、迫力が最高になりました…!炎の見た目なんて、1巻の状態でラスト描いてたら…ちょっと想像したくないですもん。柳の癒しの炎は、最高クオリティでした!
まあ成長期の子たちということで、見た目も能力も進化したと思えばいいのです。一番最後の風子なんて…一瞬誰だろうと思うくらいの変貌な気も…してしまいますね。個人的には陽炎さんですかね。変わりすぎだと思いました。確実に体型が変化しています。
総じて言うと、烈火の炎はバトルマンガの代表作で間違いなしです。そんなに伏線とかが多いわけでもないし、ストーリーがわかりやすくて応援したくなる内容でした。展開も駆け足することなく、作者の安西さんが描き切ってくれたと思います。何度も読み返しては感動をもらえる、そんな作品です。人間だれしも闇があるわけで、それを乗り越えて強くなっていくんだってことを、烈火の炎は教えてくれますね。
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