低予算映画は伝説へ
人気を不動のものとした第二作目
「I`ll be back.」の決め台詞と共に世に名を知られた映画『ターミネーター』シリーズ。近年にも新作が発表されるなど、現代では知らぬ者のいない人気シリーズとなっている映画であるが、その人気を不動のものとしたのはこの第二作目『ターミネーター2 ジャッジメントデイ』であろうと筆者は考えている。
執拗に追跡するターミネーターからの逃走・撃退をメインとした一作目と同様に、二作目もターミネーターからの逃走・撃退がメインとなる。ただし、一作目がほぼ防戦一方だったのに対し、今回はシュワちゃんターミネーターことT-800が味方となり、「お小遣いの管理も出来なかった」はずのジョン・コナーの母、サラ・コナーと共に新型ターミネーターT-1000に立ち向かう。もちろん、少年ジョン・コナーも大活躍だ。
ややホラーのテイストを匂わせた前作とは異なり、アクションと爽快感を押し出した今作は、親子愛と友情を土台とし、まさに名作の名に恥じない作品となっている。その才能はもう十分承知であるはずなのに、あらためてジェームズ・キャメロンは天才だな! と唸ってしまうような一作だった。
前作から続く愛というテーマ
ジェームズ・キャメロンは、自分の作品は「愛」をテーマにしている、と語っているらしい。『タイタニック』はまだしも、『ターミネーター』で愛……というのは、人によってはちょっと考えてしまうかもしれない。
だが、この作品の設定――SF的世界観やターミネーターの恐ろしさをとっぱらってしまうと、本当に驚くほど「愛」に満ちたストーリーであると考えている。
前述したように、一作目『ターミネーター』において、サラはただ己の状況もわからぬまま逃げ惑うだけの少女であった。それもそのはず。まだ恋人もいないのに、自分の息子が未来の英雄になると聞いて信じられないのが当たり前だ。それがカイルとの逃亡を経て、自分を命がけで守ってくれた男性に恋をし、同時に自分に課せられた運命を受け入れる。
そしてカイルとの間に生まれたジョンを守るため、まだ訪れてもいない未来のために戦う決意をする……という、途方もない強さをもった女性に変貌する。無論、未来とは人類の未来でもあるのだけれど、自分の愛したカイルがいずれ生まれ来る未来だ。そのために、サラは身体を鍛え、重火器の取り扱いを学ぶ。これが愛の力ではないといったら何になるのだろう。
男女間の惚れた張ったの物語ではないのかもしれない。しかし、『ターミネーター』の根底にある「愛というものの美しさ」に目をやったとき、筆者は鋼で出来た無骨な造形物の奥に潜む、水晶のような「透明な美」を見つけることが出来たのである。
愛だけではない熱い展開
筆者はこういった『ターミネーター』シリーズの「愛」というテーマにもっとも魅かれているのだが、おそらく多くの人たちは、それよりもシュワちゃん演じるターミネーターとジョンとの友情物語が好き、というほうが多数派なのではないだろうか。
それもそのはず。前作の『ターミネーター』はかっこよさよりも怖さのほうが勝ってしまったが、今回は純粋にカッコいいシュワちゃんが堪能出来た。
最初に心にガツンときたのは、二体のターミネーターがショッピングモールでジョンを探すシーン。
前作から観ていたファンのほとんどは、「今回は二体のターミネーターに追われるのか」と息をのんだことだろう。あるいは、筆者のように警官の服装をしているT-1000に不思議な信頼してしまい、「T-1000は味方でT-800が敵」と思ってしまった人もいるかもしれない。
ところがどっこい、蓋を開けてみれば真相は真逆。廊下に逃げ込んだジョンを狙うT-1000。そのT-1000をショットガンで撃つT-800……。前作の敵が味方であることが判明したこのシーンに大興奮した人は多かっただろう。このワンシーンで、観客の興味を一気に惹きつけることに成功した監督の手腕は本当に素晴らしい。
そしてジョンとの心の交流を経たターミネーターの心に変化が訪れるというのも、映画の重要なポイントであろう。
人間味のなかったターミネーターが悪ガキであるジョンに数々のスラングを教わるのは、コミカルでさえある。だが、そのコミカルなシーンが、「アスタラビスタ、ベイビー」とハングアップをして溶鉱炉に沈んでいく、映画史に残る名シーンを生み出していくのだからまた心憎い。
人間同士の絆と、未来を閉ざすはずのアンドロイドと人間の絆、という二本の柱を打ち立て、物語は美しいまとまりを見せつつ収束する。ジョンの成長物語でもあり、同時にT-800の成長物語でもあるのだろう。
この美しいまでのラストもまた、ジェームズ・キャメロン作品の特徴だ。
以降の作品はキャメロン監督の手がけたものではないようで、ファンからの評価は下がってしまっている。
だが、これだけ偉大な作品の続編を、クオリティを落とさず作れというほうが無理なのかもしれない。
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