歪んだ愛 - ぼくのエリ 200歳の少女の感想

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ぼくのエリ 200歳の少女

4.504.50
映像
4.75
脚本
5.00
キャスト
4.25
音楽
4.00
演出
4.50
感想数
2
観た人
2

歪んだ愛

4.54.5
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

目次

ぼくのエリ 200歳の少女 美しく儚い少年と少女の物語

初めてこのDVDを目にした時、とても美しく繊細な少年がアップで映っていました。
白い肌にブロンドの髪、青い瞳に中性的なその顔は魅力的で思わず借りてしまいました。
話のあらすじを見ていたら、吸血鬼とその少年のお話っぽいです。
吸血鬼は個人的には好きなジャンルですし、しかも幼い少女が主役とかはなかなかないので見応えがありましたね。
一般的なヴァンパイア映画といえば、
・グラマラスなネーちゃんが男を惑わし、主人公らしき人間に成敗される。
・主人公は実は吸血鬼だが、人間を殺すのを躊躇い、葛藤し、悪い吸血鬼を倒す物語。
言い方は悪いかもしれませんが、ワンパターン・王道ですね。
衝撃を受けたのは『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』ですが、これは少女が出てきますが殺されてしまいますし、基本的に生きてる少女ヴァンパイアは少ないですね。
それほどに吸血鬼かつ、少女というありそうでない組み合わせがより一層興味が湧きます。

原作は小説 邦題と題名の違い

かなりの余談ですが、原作の小説『モールス』が題材になっております。
この小説、かなりの気持ち悪さです。
この映画原作と違うなぁっていう映画は数多くありますが、違う箇所が一番違ったらいけない箇所なんです!
主人公オスカーの美少年が実はキモデブオタクだということ!!
吸血鬼の少女エリは原作でも相変わらずの美しさみたいですが。
小説はまだ全部は読んでおりません。
ただモールスという題名にも意味があったので、映画の方も『モールス』にしたらいいのにという意見が多かったですね。
個人的にはこの「ボクのエリ 200歳の少女」という目を引くタイトルだったので借りたのですが。
主人公オスカーと吸血鬼エリとのモールス信号での会話があり、それを指しているのだと思います。
この少年と少女のやりとりを美しいと思ったのでしょうね。


いじめられっ子のオスカーと美しい隣人エリとの美しく残酷な物語

舞台は雪国の寒そうな村(町?)で起こる物語。

主人公・母子家庭のオスカーは典型的ないじめられっこ。
背は低いし、小柄で、中性的な顔立ちの為いじめっ子たちの的となっている。
いじめっていうのは嫌いですね。腹が立ちます。
子供だからといって許されることではないです。
よく言われますが、やられた側は一生忘れられない傷を抱え込みます。
そんないじめられっ子のオスカーは一人で公園で遊んでいます。
するとそこに隣に越してきたというエリという美少女に出会います。
エリは顔は良いですが、その他の身なりは最悪。
オスカーに少し匂うよと言われてしまうほど。
極寒の中、半袖、半ズボンで歩いている少女は奇妙。
死人のように冷たい肌と色。これだけでも私は少女に釘付けです。

時は同じくして、この小さな町に猟奇的殺人事件が起こる。
男の首が切り開かれ、逆さまに吊られ血を抜かれている事件だ。
この時の映像に、殺人に対して何の罪も感じていない犯人の男が映し出される。
しかし、猟奇的殺人な割にはこの男全然楽しそうではない。
トロくさいし、全然慣れていない感じだ。
あっ、血抜いてんのか。この女の子の為に。
あの吸血美少女のお父さんなのかなぁっといった感じで見ていましたが、なんと恋人らしいです。
恋人いるくせに隣人の美少年オスカーを取り込もうとしているなかなかアクティブな少女ですね。

物語が進行していくにつれて、二人の友好・愛情も高まります。
二人のやりとりも子供らしく、美しく見ていて楽しいです。
そんな幸せな日々も長くは続かずに、オスカーに対するいじめが酷くなり、世間を騒がせている猟奇的殺人事件の犯人も捕まっていない。

古典的な吸血鬼の概念がこの映画には存在します。
血を啜る、猫に嫌われる、太陽に弱い等はどの映画でも見かけるが、
『招かれていない家には入れない』
っていうのは久しぶりに見た気がしますね。

そんなこんなで、二人は仲良くなったが、同時にエリが吸血鬼であるとバレてしまいます。
オスカーによる『誓いの契り』で親指を切り、双方の親指をくっつけるという儀式。
その落ちた血液をエリは啜ってしまいます。
今までの一連の事件にエリが関係していると思い、オスカーはエリを避け始めます。
エリはどうにかしてオスカーの誤解を解き、(誤解ではないが)私はあなたの同じただ生きたいだけだと言います。

また同じくして、エリの恋人(おっさん)はエリの為に人間の生血を抜く行為を続けている。
あろうことか、学校に忍び込み、学生をターッゲットとした。
色々なタイミングの悪さでおっさんは捕まりそうになる。
おっさんはその捕まることも想定していたように、硫酸をかぶり、病院へと搬送される。
想定していたというのは、もし捕まってもエリの身バレを防ぐ為に自分の顔をわからなくしたのだと思う。
それだけエリを愛しているのだろう。
おっさんは病院へ搬送されて重体。今までの一連の犯人の容疑をかけられている最中だ。
吸血鬼のエリはおっさんがいないせいで食事をとることもできず、フラフラと夜中の町を彷徨う。
すると前からおいしそうな女が歩いていき、エリはたまらずかぶりついた。
泣き叫ぶ女、その声に反応し男がエリを払いのける。
エリは動物のように早くその場を立ち去り、女は一命を取り留める。
女はエリにかまれたことで吸血鬼となり、自分でもわからない喉の渇きに悩まされる。
はっきりいってこの女は好きではありません。
毎日仲間とどんちゃん騒ぎして、バカ丸出しです。
心配した男は今日は良い天気だなーっと言って、病室のカーテンを開ける。
すると女は叫び声と共に自然発火してしまう。
男は驚き、悲しんだが、何かを確信する。
エリが吸血鬼だということを。

一方オスカーはいじめっ子に仕返ししたりと、なかなか逞しく成長。
いじめていた一人の男の子は実は嫌々参加してて、オスカーと仲良くなろうとしてくれる。
この場面が一番ほんわかしましたね。
しかしオスカーはいじめの主犯の男の子に耳に怪我を負わせてしまい、オスカーの母親は家で発狂している。
引っ込み思案な息子の言葉は何も受け入れず、ただ泣き叫ぶ。
だからオスカーは母親に見切りをつけたのだと思いますね。
居場所がなくなったオスカーは益々エリと親密な関係になります。
子供なのに色気がある二人の映像は、本当に美しい。
ただ児童ポルノにならないかが心配ですね。
オスカーがエリのシャワーを除くのですが、その時エリの股間にはモザイクがかけられています。
エリの割れ目は縫い付けられていて、実は少女ではなく少年だったという大事な映像なのですが。
なぜそのようなことになったのかはわかりません。
吸血鬼になる前に切り落とされたのか、また少年ではなく少女でただ縫い付けられているだけなのか。
とりあえず少女が普通ではないことを再度認識します。
少女の過去に何がったのか、すごく気になりますね。
まぁ200年も生きていれば何かしらあったのだろう。

オスカーの家に電話が鳴る、元いじめっ子(今は友人)の子にプールの練習するから一緒にしないか?っと誘われる。
うん!っとオスカーは嬉々としでかけますが、それはいじめっ子主犯の罠だったのです。
ケガをさせてしまった少年の兄がしゃしゃり出て、『俺の弟になにすんねん!!』的なヤンキー兄が登場。
強制的に水に潜れと指示をし、オスカーは無理矢理水の中に沈みこまれます。
いじめっこ主犯の少年も焦るぐらい、長く潜っているオスカー。
兄貴以外の子供達は若干引き気味でもういいよ!!っと言ってるのに、加減を知らない兄は聞こうとはしません。
本当に頭の悪い人って加減を知らないから怖いですよね。
オスカーが水中に潜っていたら、次々に切り落とされた首や腕が落ちていきます。
エリがオスカーを助けたのです。
自業自得といえばそれまでですが、オスカーは怯えるどころかエリに感謝します。
そして一生ついていく、エリと生きる決意をします。

この水中のシーンなのですが、とても美しく、人が殺されたとは思えない情景でした。
この映画は比較的グロテスクなシーンもないのですが、心を抉るような不快感があります。
少年と少女の歪んだ愛なのでしょうか。

最後は少年が箱に入ってるであろう少女に向かって、指でトントンっとモールス信号を送っています。
少年の末路は、エリの恋人のおっさんのようになるのだろうなっと考えさせられる最後でした。
ちなみにエリは病院でしているおっさんの血を啜り、殺します。
それはおっさんの望んだことであり、自分が幸せになるよりも優先的にエリの幸せを考えての選択だったのでしょう。
老いぼれたおっさんより、若い少年の方がこれから先もずっとエリに尽くせるだろうと考えてそう。
そうやってエリは誰かを魅了して生きながらえていくのだろうなと感じます。
無垢で純真で悪気が全くない分、その心の内が残酷です。
エリにとってその行為は生きるのに必要で通過点に過ぎない、しかし少年やおっさんにしてみればエリが全ての世界になるわけです。
同族である人間を殺し、エリに尽くす。
歪んだ愛情だと思いますが、とても美しい。
すごく綺麗な物語でした。

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他のレビュアーの感想・評価

純愛なのかホラーなのかがきわどい話

いじめられっ子の少年スウェーデン映画であり、世界中で称賛されたというこの映画。どの辺が称賛に値するかと一般人目線で考えてみると、やはりホラーとラブロマンスが絶妙に共存していることが大きいと思う。いじめられっ子のオスカーは、やり返す勇気もなくて日々やられっぱなし。ナイフで木を傷つけてどうにかやり返したふりをしてみる弱きオスカーは、雪が深々と降る中薄着でたたずむエリと出会う。予告編を見てエリがヴァンパイアだってことはわかっているし、これからホラーな出来事が続くのだろうということもわかっていたのだけれど、静かに雪の降る街で巻き起こる死の謎、それに関わる人間、そしてオスカーの恋が絡み、怖さと切なさをぐいぐいと心に落としてくる。何か1つでもいい、明るい何かが2人のもとへ届けられないだろうかと願わずにはいられなくなる。オスカーにしてみれば、辛い毎日の中で唯一の光がエリだった。自分と遊んでくれる唯一...この感想を読む

4.54.5
  • kiokutokiokuto
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