ハードルの低いOVA作品 - THE 八犬伝の感想

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THE 八犬伝

4.004.00
映像
4.00
ストーリー
3.00
キャラクター
3.00
声優
5.00
音楽
5.00
感想数
1
観た人
1

ハードルの低いOVA作品

4.04.0
映像
4.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

南総里見八犬伝

起源としている「南総里見八犬伝」においては、江戸時代の読み物です。読み物として読むにはハードルが高いので、アニメ作品として観るには丁度良いハードルの高さだと思い、観始めました。実際に、インターネット上のフリー百科事典、「Wikipedia」に「南総里見八犬伝」の物語の概略は記載されていました。その記載事項を読んでから、アニメ本編を観始めました。「Wikipedia」による「南総里見八犬伝」の記載事項、登場人物の説明から、アニメ本編を見比べると変更されていたことは多かったように思えます。しかし、概ねは原作に沿ったたかちで、アニメ化されていたように感じられました。改めて、感じられることは、長編の物語であるということです。しかし、アニメという形で、日本の歴史に残る文献に触れられたのが良かったと思っています。また、アニメというのは、現代社会では世界に誇れる文化といえるまでに大きな存在になっています。日本の歴史に残る文献が、日本の誇れる技術によって、現代に甦った作品だと捉えることができます。そういった意味で、この「THE 八犬伝」というOVA作品の存在意義は高いものなのではないでしょうか。

OVA6巻という構成

1巻のアニメ本編は約30分となっており、全6巻の合計は、約3時間ほどのOVA作品です。しかし、全6巻では描ききれておらず、登場している八犬士も5人に止まっています。最終巻である6巻では、4人の八犬士が構成され、一人は仲間入りしていない状態で、物語が締め括られています。あまりに中途半端なかたちで終わってしまっているのです。続編が制作されることを前提に、制作されたOVA作品シリーズなのだと感じました。確かに、このOVA作品シリーズの続編に該当する、「新章」というシリーズが存在します。しかし、「新章」という名付けは、一度締め括られた物語の仕切り直しをイメージさせる言葉なのではないでしょうか。言葉選びの時点で、少し間違えたものになっているように思えます。明確なかたちで分かりやすく示せば、「THE 八犬伝」は前編であり、「THE 八犬伝 新章」は後編なのです。そのことから、少し観る側として、騙された気分になってしまいます。騙された気分は、意外性という意味で良い方向に作用することもあれば、当然のこと、悪い方向に作用することもあります。残念ながら、このOVA作品においては、悪い印象を持ってしまう騙し方です。作品タイトルだけで、こんな気分になってしまうことが勿体ないと思います。

古臭さを感じさせない

率直な感想として、古臭さを感じさせない物語性に凄みを感じました。原作者の方の、才能を強く感じられる物語です。武士という身分の苦しさ、そして、恋愛要素が強く打ち出されていることで、現代社会における一般的なアニメ作品と遜色のない内容なのではないでしょうか。信乃(しの)というキャラクターの命名にも、原作者のセンスを感じさせる部分です。信乃という名前から、女性キャラクターを思い浮かべるものだと思うのです。しかし、男性キャラクターであることに、意外性があります。また、本分に真っ直ぐなキャラクター性であり、観る側として、信乃を応援したくなってしまうキャラクターです。観る側として、自分の姿を重ね、応援してしまうキャラクターなのが、信乃というキャラクターなのだと思います。おそらく、原作の意図として、信乃というキャラクターをそのように仕立てていたのではないでしょうか。「THE 八犬伝」という作品に、主人公の存在が明確にされていないと思うのです。信乃でもなく、浜路でもなく、八犬士の存在が主人公に据えられています。八人もいることから、主人公の存在が霞んでしまいます。だからこそ、信乃の存在は大きく、感情移入できる存在として、主張の強いキャラクターなのではないでしょうか。

八犬士の特徴

八犬士を表す特徴は3つあります。1つ目は、特に名字に「犬」の文字が使われていることです。しかし、アニメ本編では、そのことに特に注目されていませんでした。ただ、同じ名字の八犬士は存在せず、全員が「犬」の文字の入った名字なのに、違う名字であることも特徴といえます。2つ目は、数珠の玉を所持していることです。光輝く宝石は、特別さを演出するに充分なアイテムだと思います。また、それぞれ違う文字が刻印され、それぞれのキャラクターを表しているのが印象的です。こういった設定は、「北斗の拳」にも流用されているように感じます。南斗六星拳と呼ばれる存在には、それぞれ漢字一文字が割り当てられていました。3つ目は、身体にある牡丹のアザの存在です。身体のどこかにあるアザの存在は、八犬士の証でもあります。また、身体のどこにあるのか、キャラクターによって違うのも、面白い要素だと感じました。しかし、何故、3つも設けたのでしょうか。それは、1つでも、2つでも、良かったのしれませんが、運命的な繋がりを強調させることが狙いだったのだと思います。1つでも、2つでも、偶然の一致というのは考えられてしまうことです。しかし、偶然で3つの条件に当てはまることは、可能性の低いことです。3つも条件が当てはまることで、仲間として、それぞれのキャラクターが認識してしまうものとして納得できるものがあるように感じられます。3つの条件、全てに該当した時に感じるのは、一般的な感覚でも、偶然的なものではなく、運命的なものだと思うのです。そして、運命的とは必然という言葉に置き換えることができると思うのです。それぞれ、八犬士の仲間意識や繋がり、行動に必然性をもたせることが狙いだったように感じられます。



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