“不思議”と日常の境界線
読み切りの良さと切なさ
1話読み切りですごく読みやすいし、中途半端な巻を読んでも楽しめるのが良いところ。
その反面、きちんと解決されずに終わるような「中途半端な終わり」をしているような話は、
「解決されない怖さ」という面で、ホラー要素を際立たせているように思う。
ストーリーとしてはアリなんだけど、事件としては解決されていないというか……。
最初のころと比べて、人間模様が複雑化しているせいか、最近は特に多い気がする。
中でも、箪笥の幽霊に魅入られた開さんのエピソードは今後どうなるのかが気になる。
開さんはせっかく現世に戻ってきたのに、結局「人ではないもの」に魅入られてしまって、
その生涯を終えてしまうのだろうか……。開さんの一生を思うと切なくなってしまう。
「百鬼夜行抄」の恋愛観
恋愛話が出てこないわけではないのに、イマイチ幸せな恋愛が展開されていかない。
「百鬼夜行抄」では、一見うまくいっているような恋愛も、実はうまくいっていないというのが、なんとも切ない。
例えば……。
一見ラブラブのような律の母である絹と孝弘は、すでに孝弘の魂がそこにはないし、
心が通い合っていた三郎と晶は、三郎が人間としての生を終えてニワトリになってしまったし……。
司の崇拝者とも言える彼氏がいる司だけど、司が恋をしているようには見えない……。
先に記したように、開さんはいつも「人外の者」に魅入られてしまっている。
主人公であるハズの律に至っては、人間不信がすぎて、恋愛なんてしそうにない。
唯一認めている女性とも言える司には彼氏がいるし、「年下のいとこ」として相手にもされていない(本人は否定しているけど)。
これまで、おじいちゃんから受け継いで来た不思議な力だけど、この分だとこの力は、この第3世代で途絶えてしまうのではないかと思う。
律が今後、恋愛をするとしたらどんな人とするのだろうか。
やっぱり、律は司のような「本物の力」や「自分と同等以上の力」を持っている人を
好きになるのだろうか。それとも蝸牛のように、何もかも吹き飛ばすような八重のような力を持つ人に
心惹かれていくのだろうか……。気になる!
律と青嵐の関係
律の心臓が一度止まってしまって、蝸牛との契約が完了してしまった青嵐。
蝸牛にしてはツメが甘い契約だったように思うのだけど……。
その後も律と一緒にい続け、「ボランティア」と称して律を守っている青嵐。
実は律が気に入っているのでは、とか、妖怪にも「情」があるのではと思わせる。
それでも、いつかふいにいなくなってしまう日が来るのだろうか。
お互い、おもうように行かない2人だけど、律が生を終えるその日まで、どうか続いてほしいと切に願ってやまないのです。
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