山岸涼子の描くバレエ漫画珠玉の短編
バレエ漫画のオーソリティが描く、二人の天才の伝記的作品牧神の午後には、二編に分かれています。前編はヴァーツラフ・ニジンスキーが主人公の「牧神の午後」、後篇はジョージ・バランシンの三人目の妻、マリアが主人公の「ブラック・スワン」です。どちらも珠玉の短編で、天才であるニジンスキーとジョージというふたりの主人公は、その二人の視点から直接描くと、読者には共感し難いものがあります。ジョージは単なる気の多い男性として見る事もできますが、ニジンスキーは長年発狂しており、彼の手がけたバレエ作品も、当時は異端中の異端でした。そこで、ニジンスキーは振付師のミハイル・フォーキン、そしてジョージを彼の妻であるマリアが、同情や恨みなど、人並みな感情を込めて語ることで、この二人の天才を、理解し易く魅力的な人物として描いており、伝記的な作品であるのに関わらず、退屈しません。「牧神の午後」は、ヴァーツラフ・ニジンスキ...この感想を読む
4.54.5
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