普通でいようとするって大事! - 百鬼夜行抄の感想

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百鬼夜行抄

4.884.88
画力
4.75
ストーリー
4.58
キャラクター
4.63
設定
4.88
演出
4.75
感想数
4
読んだ人
9

普通でいようとするって大事!

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

幽霊にもマケズ、妖怪にもマケズ。

主人公は幽霊が見えちゃうし、実家も妖怪だらけっていうかお父さんの中身も妖怪!お母さんとおばあちゃんも、「うちってちょっとヘンよね」というのは解ってる。でも、そんな環境の中でも淡々と普通に生活していて、そういうのって大事だな思いました。

積極的におかしなものに振り回されないようにする姿勢というか、人間としての当たり前の暮らしをちゃんと営む姿勢というか、普通でいようとすることはとても大事なことだと思います。

ある著名な霊能者さんが言うには、おかしなものを感じても、それにばかり意識を向けて生活をおろそかにすると、どんどんおかしなものに引きずられてしまってよくないそうですが、主人公が環境の割に正常な思考を保ち続けられているのも、そういうことなのだと思います。

霊が見えることと除霊ができることを混同して誤解する周囲の人から除霊を頼まれたときに、「僕は見えるけど特別な力はないから何もできないよ」と言って断ろうとするのも、この主人公らしいです。自分のことをよく解っていて驕らず、まだ学生だけれどすごく大人ですよね。

あと、基本的にみんなおかしなものと戦ってないですよね。調べたり、身の危険があるときは一応戦いますけど、「幽霊に勝つぞ!」みたいなのは普段はあんまりなくて、それより茶道教室を維持する方が大事みたいな(笑)。きっと、そういう姿勢があるから、いろいろ巻き込まれながらも必要以上に振り回されないんだろうな、と思います。

ホラーだけど呑気。

登場人物がそんな感じなので、ホラーなのにおどろおどろしくないのもよかったです。特に、お母さん&おばあちゃんが呑気で楽天的なので、深刻な状況でもあまり深刻にならないですね。こういう感じって、実際の生活の中でも大事なことだと思います。同じ状況でも、楽天的に構えられる人の方が乗り越えやすいというか。

主人公の一族って、見方によってはもっと不幸な描き方もできるんですよ。霊に取り憑かれたせいで、目立つ痣ができてしまった従姉妹の女の子とか、神隠しに遭った親族も、もう中年なのにずっと異界にいたせいで社会常識が欠如していて成年並みの頼りなさのまま、社会生活を送らなければならないですし。

でも、周りがそれはそれで「あらあら;;;」って言いながらも受け入れてくれるので、そんなに不幸じゃないですね。

お父さんの体を操ってる強力な妖怪が、術者との契約切れでいつ人間に牙を剥くか分からないとか、状況としては結構深刻なんですけどね。

愛って多分、こんな感じ?

私自身は虐待されて育ち、私自身も他人の好意を信用しない人に育ってしまった為、愛がどういうものなのか、実体験としては理解できていません。そんなものが実在するのすらあやふやです。

主人公のお父さんは、中身が妖怪になったときから仕事もせず、家族にもわりと横暴で、妻も大事にしませんし、はたから見るとろくでもない男ですが、主人公のお母さんがそれでも夫を大事に思っているのを見て、こういうのが愛なのかな~、とちょっとだけ解ったような気がします。

お母さんは、夫の中身が妖怪になっていて、本人はもう死んじゃってることを知らないんですよね。事情も理由も分からないけれど、あるときから夫がおかしくなった。そんな状態でも、夫が生きててよかったと言って大事にしています。

神隠しで何十年も行方不明だった親族がある日ふらっと戻って来たら、それもそれで普通に受け入れていて、血の繋がりってそういうものなのかもな~、と思って読みました。それでいて、特別、博愛的な人たちというわけでもなくて、その普通な感じがいいです。

親族だから、家族だからという理由で心地良い関係を築く経験がなかった私には、新鮮でした。

文鳥ってこんな感じ(笑)。

主人公の従者(?)の尾白と尾黒は文鳥がモデルと思われますが(作者さんが文鳥を飼っているので)、確かに文鳥ってこんな感じですね(笑)。本人はいたって真剣だけれど、人間から見ると何かおかしい(笑)。そして割と乱暴&横暴&自己中でおめでたい(笑)。

そういう、文鳥の特色が尾白&尾黒によく表れていて、文鳥を飼ったことがある人ならきっと、「そうそう、うちの文鳥もこんな感じ」と思いながら読んだのではないでしょうか。難しいことは考えられない感じも、文鳥っぽいですね(笑)。切羽詰まった状況でも、構わず酒盛りしちゃう(笑)。

私はもともと、この作者さんの作品は「文鳥様と私」から入っていて、「百鬼夜行抄」も表紙に文鳥っぽいキャラが描かれていたので読み始めたので、尾白&尾黒に注目しながら読んでいます。どっちがどっちか見分けが付いていなかったりしますが(汗)。

全体的に、キャラの描き分けはあまり得意ではないっぽいですかね。特に若い女性のキャラクターは、「これ誰だっけ?」となるときが結構あります。あとたまに、どう言うことだったのか解からないまま話が終わるときが…。作者さんは解ってるのかな?

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“不思議”と日常の境界線

読み切りの良さと切なさ1話読み切りですごく読みやすいし、中途半端な巻を読んでも楽しめるのが良いところ。その反面、きちんと解決されずに終わるような「中途半端な終わり」をしているような話は、「解決されない怖さ」という面で、ホラー要素を際立たせているように思う。ストーリーとしてはアリなんだけど、事件としては解決されていないというか……。最初のころと比べて、人間模様が複雑化しているせいか、最近は特に多い気がする。中でも、箪笥の幽霊に魅入られた開さんのエピソードは今後どうなるのかが気になる。開さんはせっかく現世に戻ってきたのに、結局「人ではないもの」に魅入られてしまって、その生涯を終えてしまうのだろうか……。開さんの一生を思うと切なくなってしまう。「百鬼夜行抄」の恋愛観恋愛話が出てこないわけではないのに、イマイチ幸せな恋愛が展開されていかない。「百鬼夜行抄」では、一見うまくいっているような恋愛も...この感想を読む

5.05.0
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