こどもの体温のあらすじ・作品解説
こどもの体温は、1997年から1998年に『wings』に掲載されたよしながふみ原作の全1巻漫画短編集である。 ある父子を中心として、その周辺関係者にスポットが当てられ話しが展開されていく。全5編と描き下ろし1編からなる。 第1話ではこの漫画の主軸である二人、父・高紀とその中学1年生の息子・紘一によるエピソードであり、事件は父子家庭ながら優秀に育った息子が、突然ガールフレンドを妊娠させたかもしれないと父に突然打ち明ける事から始まる。衝撃を受けた父だが、相手の女の子を連れ婦人科に行く事になる。 第2話では父・高紀の亡き妻の父との話が語られ、第3話では高紀の高校時代の後輩である男性二人を主人公にとある事件をきっかけにした二人の歪んだ関係から話が展開し、第4話では紘一の同級生でバレエコンクールを目指す男の子と紘一の会合が、第5話では第1話のその後といえる中学卒業を間近に控えた紘一と事件の相手である初体験の女の子のエピソードが語られる。
こどもの体温の評価
こどもの体温の感想
口に出せない思いをこまやかに描く、珠玉の短編集。
作家・酒井高紀とその息子・紘一を中心とした、周囲の人間模様を描く連作。酒井の妻はすでに他界していて、他の登場人物たちは紘一の(母方の)祖父母、紘一のGF、同級生など。とくにおすすめするのは「ホームパーティ」と「僕の見た風景」の二編です。「ホームパーティ」は、亡き妻の実家へ行った酒井親子のお話。紘一が寝静まった夜中、ひょんなことから高紀は舅と二人で翌日のホームパーティ用の料理をはじめます。それらはすべて、亡き妻の得意な料理でした。お互いに主語をかわさず、料理の話をしながら妻を、娘を思う流れのなだらかさに、ぐぐっときてしまう作品です。「僕の見た風景」は高紀の大学の後輩の話。自動車事故により1人が死亡、1人が脊髄損傷の重傷を受け、運転していた男を「一生こき使ってやる」と恨みながら、同居をはじめる…という話。陰にうかびあがる愛情を描いた、こちらも名作と思います。