佐々木小次郎との決定的な違い - 宮本武蔵 双剣に馳せる夢の感想

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宮本武蔵 双剣に馳せる夢

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ストーリー
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声優
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音楽
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佐々木小次郎との決定的な違い

5.05.0
映像
5.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

 

宮本武蔵ドキュメント

宮本武蔵といえば、今にも語り継がれる有名な歴史上の人物だといえます。

宮本武蔵をモデルにした時代劇や映画、そして漫画や小説などは数多く存在しています。しかし、全ては事実なのか、曖昧な部分が多いということです。ドラマチックな展開を描きたい作者たちは、脚色することで、作品そのものを面白くしようとしてしまいます。このアニメ作品「宮本武蔵 双剣に馳せる夢」が徹底しているのは、ドラマとしての作品ではなく、ドキュメンタリーに徹底して制作されているということです。

ドキュメント作品なので、物語性は一切ありません。

宮本武蔵がどんな人物だったのか、残っている記録を元に考察している内容です。その内容は、漠然と宮本武蔵という人物に抱いていた印象は虚構であるということです。非常にユニークですが、勉強になる作品でした。

まずは、幼少期・青年期の宮本武蔵は暴れ者で、手におえないキャラクターに描かれていることが多いと思うのです。ただ、宮本武蔵は関ヶ原の戦いに足軽として参加しています。そして、大きな戦果を挙げることなく、合戦は終わってしまったという事実です。

そして、その事実は、宮本武蔵を大きく変えるものになったと考えられます。

確かに足軽では、戦果も残せないのは当然のことだと思います。個人レベルで如何に強くても、数百、数千、数万という単位の中では霞んでしまうのは間違いないことでしょう。

そして、「宮本武蔵 双剣に馳せる夢」の本編で語られていたのは、「馬」の存在です。

これが意外な展開だったように感じました。これまで宮本武蔵をモデルにした時代劇などで、馬の存在に言及していた作品を知りません。しかし、宮本武蔵が残した書物・手紙には、馬に対する拘りを、強く感じられるそうです。

剣術家、兵法者として名高いイメージだった宮本武蔵が、自分の中で大きく変わりました。

 

二刀流の存在

宮本武蔵といえば、二刀流で有名です。しかし、それは馬上での戦いを想定したからこそ、編み出された剣術だということでした。おそらく、書物などに残された記載から考えられる、ひとつの仮説なのだと思います。

しかし、現時点では非常に有力な仮説なのではないでしょうか。

確かに、馬上で左右の敵に対応するのに、二刀流という存在が合理的なものだと考えられます。馬上の武器というと、槍を思い浮かべます。間合いが長く、馬上であれば、陸地の足軽に対して頭上から攻撃できます。しかし、左右の敵に対応するのに、武器を左右の手で持ち替えることや、向きを180度旋回することが必須になってきます。

それを解決するのが、二刀流という戦い方だというのに説得力が強いと思います。

そこまで、馬のことを考えている宮本武蔵のイメージは、これまで自分自身の中になかったものです。

 

太平の世の中

宮本武蔵は、関ヶ原の合戦で自分自身の考え方や生き方を大きく変えました。

しかし、皮肉なもので、戦乱の世は終わり、徳川幕府が誕生することで合戦の場はなくなりました。馬上での戦いを想定していたのも、合戦の準備という意味合いは大きかったと思うのです。しかし、それが活かされる機会がなかったのは、とても残念なことだったと思います。宮本武蔵本人にしてみても、心残りだったのは間違いないと思います。

まさに生きている時代を間違えた人物なのではないでしょうか。

「宮本武蔵 双剣に馳せる夢」本編では、「時代錯誤」という言葉が用いられていました。平和な世の中で、終わった合戦のことを考え続けている人物として、適した表現だと思います。

 

アニメ構成について

博士・先生のような人物が解説するようなかたちで、本編は進行していました。淡々と語っていても良かったと思いますし、感情の起伏があって強調すべきところは熱く語っても良いのだと思います。しかし、中途半端な笑いを狙っている部分も見え見えで、冷めてしまう印象は強かったです。

率直に申し上げて、その部分は本編の中でも不要なものだったと思います。

ドキュメント作品なのであれば、そういった作風にこだわって仕上げて頂きたかったです。宮本武蔵のことを真面目に語った内容なのに、笑いは一切必要ないでしょう。笑いそのものも幼稚園児だったら笑うかもしれない幼稚なものでした。凄く面白い内容だっただけに、その部分はとても目立ってしまいます。

そんな場面で本編の時間を割くのであれば、宮本武蔵ネタを一つでも多く語ってほしかったです。

作品のサブタイトル「双剣に馳せる夢」についてですが、本編内容と合致するもので、明かされていなかった宮本武蔵の夢に言及されたものだと考えられます。平和な世の中になっても、戦のことをずっと考えていた人なのです。それなりの身分となり、足軽ではなく、馬を駆って戦場で活躍したかったのだと思います。

その考察結果が、しっかり反映された作品タイトルの命名だと思います。

最強の剣士を目指していた印象が強い宮本武蔵ですが、本人はそんなことを望んでいたわけではなかったのかもしれません。

「佐々木小次郎」も「宮本武蔵」も兵法者ですが、両者に大きな違いがあります。佐々木小次郎は、剣術家としての兵法者だったのだと思います。それに比べ、宮本武蔵は、軍略家としての兵法者だったのではないでしょうか。

そして、徳川の世は300年続きますが、軍略家として兵法を練った唯一の存在だったのかもしれません。

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