驚かされるジャン・ヴァルジャンの生き方 - ああ無情の感想

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ああ無情

4.504.50
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驚かされるジャン・ヴァルジャンの生き方

4.54.5
文章力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
4.8
設定
4.8
演出
4.0

目次

葛藤こそがドラマの源となる

レ・ミゼラブルは、舞台や映画で何度も上演されている名作、日本題では「ああ無情」と付いていましたが、最近ではほとんど「レ・ミゼラブル」で通っています。レ・ミゼラブルというと格好いいですが、私としては「ああ無情」という日本語の題名の方が、心に響きピッタリだと思います。あまりこの題名を使わなくなってしまったので、残念な限りです。

こうしようと思ったことが、思うようにならないという葛藤こそが、ドラマの源になっているのだと「レ・ミゼラブル」を読んで思います。もしもジャン・ヴァルジャンに何の障害もなく人生を送っていたとしたら、人の痛みもわからず、神父の気持ちも感じる事なく生きて行くでしょう。それは、ジャン・ヴァルジャン以外の人物にも言える事です。ジャバールにとっては、ジャン・ヴァルジャンが障害であり、フォンティーヌにとっては遊ばれた男や預けてしまった事が、自分とって障害となるのです。葛藤や障害は、人生において経験したくないものですが、こういう障害からドラマは生まれて、人として内面から成長させてくれると思います。

ジャン・ヴァルジャン以外の人物は単純

ジャン・ヴァルジャンに降りかかる数々の困難、彼の中で悪い心と良い心が葛藤する訳なのですが、ジャン・ヴァルジャン以外の人物は、意外に単純に描かれ、それぞれのテーマ別に応じて配置されていると感じました。

コゼットは、ジャン・ヴァルジャンの愛と、マリユスへの恋愛感情を描き、ファンティーヌは母親の愛を訴えかけます。また、マリユスもコゼットへの男女の愛を表現するために登場した人物。一方のテナルディエー家は悪党を演じ、長女であるエポニーヌは、悪事を手伝いながらマリユスを、愛す役割を持っています。そして、役人としての使命感を持つジャベールと、多くの登場人物がいるのですが、どの人物もかぶることなく明確な役割を持っているのです。ジャン・ヴァルジャンという存在は、これらの登場人物によって、より引きたてられていると思います。

 

なぜ?コゼットを預けてしまったのか

この物語の中で、疑問となって残るのは、フォンティーヌが見ず知らずの人に、かわいいコゼットを預けてしまったのかという事です。確かに、働くにあたって小さな子供はじゃまになるかもしれませんが、今会ったばかりの人に預ける気持ちが理解できませんでした。預けなければ、こんなコゼットのような幼い子供の悲劇は起こらなかったのではないでしょうか?

 

ジャン・ヴァルジャンの出世が早い

徒刑囚とは犯罪者の事ですが、徒刑囚のジャン・ヴァルジャンの出世の早さには、驚きました。事業で成功し、市長になってしまうなんて、読んでいても追いつけませんでした。その理由として上げられるのが、ジャン・ヴァルジャンの出世する過程を描いてないからだと思います。「レ・ミゼラブル」では、説明もなく人物達が急展開し、のちに説明がはいっているという描き方が、所々にあります。後からの説明でも理解はできますが、実感としては感じられません。

 

スピーディーなラストの展開

「レ・ミゼラブル」は、フランス革命や当時の時代背景を知ることができますが、今の時代に沿って考えると、革命を起こす気持ちや国と闘う気持ちが、あまり理解できませんでした。そのせいか、「レ・ミゼラブル」の中盤に入ると、退屈になり飽きてしまいます。ただし、ラストに近づいてくると、スピーディーな展開となりドキドキしながら読むことができます。今まで起きていたストーリーや、多くの登場人物を使い、見事な伏せんをはっています。伏せんの張り方もとても見事に、計算されつくしているラストは、圧巻でした。

ラストのシーン、ジャン・ヴァルジャンが亡くなっていく場面は、ジャン・ヴァルジャンの人柄表わすかのように、厳かで静かなラストシーン、感動せずにはいられませんね。

 

ジャベールは自殺する必要があったのか?

ジャベールは、ジャン・ヴァルジャンに助けられた事から、今までの自分を見失い苦悩の末に自殺するのですが、果たしてそこまでする必要があったのか?と思います。ジャン・ヴァルジャンが、ジャベールの命を救ったのです。ジャン・ヴァルジャンがせっかく身を持って助けてくれた命なのに、粗末にしてはいかないのでは?と思いました。そして、ジャベールという人間が、ジャン・ヴァルジャンによって、変化していく様子が何よりも、心に残りました。あの冷淡でジャン・ヴァルジャンを目の敵にしていたジャベールが、ジャン・ヴァルジャンに対して敬語を使い、尊敬のまなざしとなる場面が一番良かったです。

人が変わっていく、変化していくという場面は、とても魅力的ですね。ジャン・ヴァルジャンや、フォンティーヌ、コゼット、マリユスらは、物語の中で変化をし続けています。ストーリーはもちろん面白いですが、人が誰によって、どう変わっていくのか?と考えながら「レ・ミゼラブル」を読んでも、面白いと思います。

 

コゼットの成長が見たかった

少女の頃のコゼットは、とっても可哀想で見てられません。その後、どのような環境で素直に育っていったのかを見てみたかったです。

 

 

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