女性向けのBL作品ですね…
一般男性が観るにはキツイ!
物語性そのものは陰陽師の戦いであり、見応えのあるアニメ作品だと思います。しかし、主人公の火月(かげつ)は女性キャラクターで良かったと思います。その方が、一般男性目線では抵抗がないアニメ作品に仕上がったのではないでしょうか。
そうすることで、男女のラブストーリーという意味合いが強くなり、一般男性目線の抵抗は少ないアニメ作品になったように思います。しかし、火月を愛する相手に合わせることができる両性体とすることで、観ていて一般目線からは複雑な気分にさせられます。しかも、火月は両性体としながらも、外見は男性的に描かれていることで、ボーイズラブ要素を強調する内容になっています。よって、アニメ本編の外見は、男同士の恋愛要素を打ち出したものに映ってしまいます。
火月の身体から甘い匂いが漂っても、女の子に見えなくもなくても、気色悪く感じてしまうのは否めないです。今の流行を汲み取って、意図的にこのような作品に仕上げられているのだと感じられます。火月というキャラクターの存在が、雄弁にそれを物語っているのではないでしょうか。
原作が月刊少女マンガ雑誌にされていたことから、女性向けであるのは間違いのないことでしょう。「腐女子」と呼ばれる層に向けて、発信されたコンテンツなのであろうと推測させられます。
主人公が誰なのか!?
アニメ本編では、火月の目線で物語進行していくことが多いようです。土御門 有匡(つちみかど ありまさ)が主人公、という考え方・受け取り方もあるのかもしれません。しかし、有匡は何を考えているのか分からないキャラクターであり、彼自身の真意は伏せられています。
火月が主人公だと捉えるのが妥当なのだと思います。
火月の視点で、有匡の真意を探っていくことが物語の面白さなのだと考えられます。有匡は強い力をもっており、頭の良いキャラクターなので、女性目線からも得点の高いキャラクターといえるでしょう。そして、OVA作品で有匡の声を演じているのは、子安武人さんです。低くて透き通るような声質であることから、制作スタッフがクールで魅力的な人物に仕立てる意図を強く感じとれます。
そんな魅力的な有匡と、主人公である火月がどのような過程で結ばれるのか、それを楽しむアニメ作品なのではないでしょうか。
ここまで条件が揃っていると、有匡と火月は結ばれることは既定路線のように感じられます。結果的に結ばれない、という結末や展開もあるのかもしれません。しかし、観る側はそれを期待していますので、わざわざ裏切る理由も見当たらないように思います。
また、有匡と火月は結ばれることが既定路線、というのは少女マンガ特有の決まりごとのようなものではないでしょうか。俗にいう「お約束」と呼ばれるものであり、それを覆す展開は考えられません。
くっつきそうで、くっつかない展開も少女マンガの「お約束」ともいえますが(笑
声優の凄み
有匡という登場人物のイメージを形成するに、声優の子安武人さんの存在は欠かせないといえるでしょう。特に、クールキャラを演じさせたら、右に出る者はいないのではないでしょうか。私の印象では、「頭文字D」の高橋涼介、「魔装機神」のシュウ・シラカワといったキャラクターが思い浮かびます。
どのキャラクターにおいても、キャラクターのイメージが合致してしまうのが凄いところだと思います。頭がとても良い人物像で、作品の中で凄まじい力量を発揮するキャラクター達です。まさに、有匡の印象とも合致するものであり、このキャスティングは子安武人さん以外にないものだといえます。
子安武人さんがこういったキャラクターにしか向かないわけではありません。有名どころでは、「キャプテン翼」の日向小次郎なども演じておられますが、クールキャラクターを演じる子安武人さんは凄いと思います。
それだけで、「火宵の月」というアニメ作品の価値を上げる結果になっているのではないでしょうか。
制作された目的!?
アニメ自体は、30分ほどのアニメ本編が2巻で構成されたOVA作品です。全て観通しても、60分も要しない内容となっています。そして、物語においても、原作マンガの序盤に触れる程度のものであることも伺えます。
OVA作品「火宵の月」を観て、興味をもった方を原作マンガに誘導する目的が強いのではないでしょうか。それを表す部分では、OVA作品「火宵の月」の本編に、制作スタッフや原作者のメッセージ性を感じとることができません。火月や有匡の気持ちに焦点を当てた物語の展開がされています。
物語自体は完結していますが、火月や有匡が結ばれたわけではありません。原作マンガでは、二人が結ばれて締め括られていると思うのです。
すなわち、先の展開が気になれば原作マンガを読む以外の方法はなく、暗に、観る側にそれを促しているアニメと考えられるのです。
有匡の声優に、子安武人さんを起用しているのも、有匡の魅力を打ち出そうとした意図が強いです。そして、魅力的なキャラクターだからこそ、どのように物語が展開していくのか、どのような結末をするのか、気になる部分にさせたかったのではないしょうか。
そういう制作された目的が強く感じられるアニメ作品のように思います。
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