人気シリーズ「まよパン」の魅力 - 真夜中のパン屋さんの感想

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真夜中のパン屋さん

4.384.38
文章力
4.25
ストーリー
4.13
キャラクター
4.50
設定
3.75
演出
4.13
感想数
4
読んだ人
6

人気シリーズ「まよパン」の魅力

4.04.0
文章力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
3.5
演出
3.0

目次

ドラマ化も果たした大人気シリーズ

シリーズ累計120万部を突破したベストセラー、『真夜中のパン屋さん』。作者は『てのひらの父』で人気作家となった大沼紀子さん。そもそも人気のきっかけとなったのが、2012年に始まった「まよパンディスプレイコンクール」。全国の書店でまよパンがディスプレイされている写真を表彰するイベントでした。そこから書店員の熱烈な支持もあり、人気は爆発的なものに。2013年には滝沢秀明主演でドラマ化し、2016年3月にはファン待望の5巻が発売されるなど、まだまだブームは終わりそうにありません。

ところで書店員の支持というのは、昨今では一番重要なファクターとも言えます。例えば有名なのが羽海野チカのコミック『ハチミツとクローバー』。もともと全然売れなかったものを、全国の書店員が「この本を売りたい」と立ち上がり、企画・ディスプレイに力を入れた結果、社会現象とも言えるほどの大ヒット作品となったのです。また、2004年から始まった「本屋大賞」は、「新刊を扱う書店(オンライン書店を含む)の書店員」の投票によってノミネート作品および受賞作が決定されるという一風変わった文学賞で、書店員が「いま本当に売りたい本」がダイレクトに反映されます。そのため、この賞に選ばれた作品は「本当に面白い本」という印象がつき、ノミネートされただけでも発行部数に影響すると言われています。

まよパンもこの例にもれず、全国の書店員に支持されて大人気シリーズとなったのですから、面白くないわけがありません!では、本作の人気の理由を考察していきます。

パン屋とイケメン

本作の舞台、真夜中のパン屋ことブランジェリークレバヤシは、夜11時~朝5時までOPENの一風変わったパン屋です。母親に失踪され、このパン屋の2階に住まわせてもらうことになった女子高生・望実が、周囲に支えられながら自らの問題に立ち向かってゆく・・・。表紙だけ見るとライトノベルのように見えますが、望実のいじめや育児放棄などかなり重たいテーマがそこここに溢れています。

さて、まず人気の理由として思いつくものといえば、やはりイケメン!ブランジェリークレバヤシでは、オーナーの暮林陽介とパン職人の柳弘基という二大イケメンが人気を二分しています。「あのな、望実ちゃん。パンてのはな、平等な食べ物なんや」と穏やかにほほ笑む暮林は、温厚で大人の魅力たっぷり!パン屋なのに不器用で、まともにパン作りができないところがまたカワイイのです。しかし、彼はもともと高学歴エリート。そして妻を若くして亡くした過去を持っています。彼が背負っているものは5巻が出た現在も全て明かされておらず、まだまだ裏がありそうな印象です。

一方弘基は超がつくほどのパンマニア。パン馬鹿というべきか、頭の中は10割パンしかないような男です。口調も荒く「お前」「食え」など上から目線なオレ様系。それでも、文句を言いながらも望実の面倒を見てくれたり、美味しいパンを焼いてくれたりする優しさにキュンとさせられます。また彼は、亡くなった暮林の妻をずっと愛し続けているという複雑な設定。オラオラ系なのに一途でしかもイケメン。そしてパン作りの腕は折り紙付き。キャラクターとして100点満点の男性キャラです!

主人公の家庭事情

次に、主人公・望実の家庭が複雑すぎるところ。少女漫画でいえばタアモ『たいようのいえ』、仲村佳樹『スキップビート』など、母親とうまくいかないヒロインは近年非常に人気があります。家庭に問題がある、私の居場所がどこにもない。そのような、思春期であれば誰もが感じたことがあるような孤独感を、ヒロインに照らし合わせて読むことができるのです。望実は、母親にことあるごとに置いていかれ、親戚や知り合いなどたくさんの大人に預けられて育ちました。そんな育児放棄してばかりの母親を「カッコウ」とバカにされ、学校でいじめにあうなど苦労が絶えません。1巻でブランジェリークレバヤシに居候となった彼女が周りの大人たちにそっけない態度を取り続けていたのは、この養育環境に原因があったと思います。周りの大人を信用していない、というより何も期待しない。その姿勢は潔くも見えますが、とても悲しくも見えます。

また、同じく母親に育児放棄を受けているこだま少年に必要以上に感情移入してしまうところは、自分の傷を重ねているようにも読めます。通常、望実のように母親に育児放棄された場合、自己評価が低く、他人とうまく関係を作ることができず、攻撃的な性格になったりする傾向があると言われています。望実も1巻では暮林に対し「アンパン嫌い」と切り捨てたり、せっかくお弁当に持たせてくれたパンを捨てたり、クラスメイトとハデに殴り合うなど攻撃的な一面がありました。親切にしてくれる暮林たちに対し、どのように接したら良いのかわかっておらず戸惑う様子も見られます。このような状態でこだま少年に出合い、彼を助けてあげることは、過去の自分を助けてあげる疑似体験となったのではないでしょうか。

主人公の成長と恋の行方

上記のように、主人公望実の成長はこの作品を通じてのテーマであるとも思えます。そして最新刊5巻ではついに母親との接触を果たします。育児放棄により母親からの愛情を十分に受けないまま、母に死なれてしまった望実が今後どのような成長をするのか。そして弘基との恋の行方は・・・。今後の展開も楽しみです。

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