リメイクされた赤ずきん
音楽や作画のこだわり
音楽の強弱、そして作画では特に人間の感情表現が独特で細かいですね。また背景においても、街中の転がってるゴミまで再現されていました。
ものすごく描写が細かくて、戦後の貧しい日本が時代背景になっていました。実写の映画作品よりリアリティーがありました。
登場する武装類だけが、妙に現代チックなものが使用されています。暗視カメラや兵士が装備してる銃装備デザイン、そしてプロテクターなど、とても時代背景とミスマッチに感じました。恐らく、製作スタッフは意図的にそうしているのだろう、と思います。単純にそっちの方がカッコ良かったからなのでしょうか。昔なのか現代なのか、最初はよく把握できなかったです。
またテロリストVS警察・防衛組織の図式で物語が展開していくのか、と思えば、身内同士の内輪モメが主な展開でした。警察・防衛組織の中でのメンツや権力争いを描いていましたね。
想像していた内容と、全然違った中身でしたが、それはそれで楽しめたように思います。
思っていたより、バトル展開は少なめで会話の場面が多かったようでした。なので、細かな感情表現がとても活きたように思います。この作者の作風、画風というものがそうなのでしょうが、表面に表さない感情までも、眉の動きや口元の動きで細かく描いていましたね。
また音楽の部分でも、いきなり音がなくなって、静かにする場面の使い方が上手です。それだけで、観ていて作品の中に引き込まれていきました。音楽の効果をここまで意図的に使っているということは、間を大切にしているということでもあると思うのです。
この作品は、何回も何回も繰り返しチェックしながら、コンマ1秒単位での編集作業をして作り上げられたもののように感じます。作品自体のクオリティーが非常に高いものになっていて、感動すら覚えますね。
実写映画で作れば!?
すごく細かい描写をされてる作品なのですが、なぜアニメ作品として製作したのか分からないですね。役者が演じて、カメラを回して、製作することで簡単にできる作品だと思うのです。むしろ、そちらの方が簡単に製作できたように感じてしまいます。
これは製作スタッフのアニメというメディア媒体へのこだわりだったんでしょうか。そう考えると、製作スタッフは、よっぽどアニメというメディア媒体が好きなんだなと感じさせてくれますね。
これぞ、日本のアニメ文化の真骨頂、とすら思わせるクオリティーです。
やはり、日本という国は、アニメジャンルにおいては世界No.1ですね。
「赤ずきん」と戦闘の融合
代表的な童話で、幼いころに誰でも読んだ身近な「赤ずきん」と戦闘アニメのミスマッチな融合も、この作品の魅力となっています。
むしろ途中からの展開は「赤ずきん」そのままに仕上がっていますよね。
これは脚本の凄いところ、発想と着眼点が素晴らしいと思います。孤独に戦う兵士を「オオカミ」に例えることは多いと思うのです。しかし、それを「赤ずきん」に登場する「オオカミ」に結びつけることが斬新な考えですよね。
少し前にベストセラーになった本に、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 」というものがあります。凄く売れた本で人気も高く、アニメ化され、ドラマ化までされ、世の中に強烈なインパクトを与えたといっても過言ではない作品だったと思います。物語の展開も非常に面白くて、ユーモア溢れる内容でした。振り返ってみると、この「人狼 JIN-ROH」もそれと同じ発想のような気がします。
言葉は同じで、意味も同じだけど、想像するものは別モノなんですよね。しかし、それを結びつけて作品そのものの魅力を打ち出すという考え方に、非常に近いものを感じます。
そして「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 」より「人狼 JIN-ROH」の方が、世の中に登場しているのが早いのです。そういった意味では、先駆け的な存在である、といえなくもありません。
主人公の本性
皆さんはどう捉えられましたか?少なくとも、主人公の本性は「オオカミ」ではないと思うのです。
所属している「人狼」という組織は明らかに「オオカミ」であるといえるでしょうけどね。
最後に、女の子を撃ったときに、とても悲しそうに描かれていたのが印象に残っています。その時点で、主人公は「オオカミ」に成りきれていないんですよね。物語冒頭の部分で、テロリストの子を撃てなかったこともそうだと思うのです。
しかし、最後に撃ってしまったことで「オオカミ」に変わっていくのかな、とは考えてしまいます。
「オオカミ」の群れの中にいることで、主人公も「オオカミ」に変わっていく様子を描いているように感じました。
しかし、主人公と女の子の距離が近くなればなるほど、主人公が「オオカミ」になることが切ないですよね。
テロリストの存在
未成年の女の子の自爆というのは、とてもインパクトが大きかったですね。
しかし現実社会でも、ヨーロッパ諸国やアメリカが標的となり自爆テロが起きています。また幼い子供、女性までテロリストになっていることをニュースで見聞きする時代です。
現実社会では、宗教の対立構造が強いので、「人狼 JIN-ROH」で描かれている背景とは違うかもしれません。
しかし、作品の中で、こんな未来がくることを示唆していたのかもしれませんね。
戦後の時代、過去を描くことで未来を示唆する、というチグハグな部分が、一層に恐ろしさを感じさせます。
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