小説を通して見えてくる日本歴史。
小学校の教科書がキッカケとなり読み始めた芥川龍之介さんの作品。
また読みたくなる独特の言葉使いや言い回しは病みつきになりそうです。
羅生門の時代背景は平安時代末期の秋から冬の間。
飢饉等、よく時代背景を考慮しているなぁと感じられます。
事実平安時代の後半は地震や火災等も多く、門の下へ運ぶ他無かったのでしょう。
大切にしていたモノも捨てねばならん、
仏像も砕いて燃料として売るぐらいだから相当貧しく、食料にも困る。
食料に困れば体が弱る。弱れば免疫力が落ち、病が流行る。
貧窮階層で死者が多く出れば死体は風葬(野晒し)。
所謂あちらこちらがスラム状態なのだろう。言うまでもなくそれらは悪循環である。
当時の歴史的資料として六道絵「餓鬼草紙」を見れば一目瞭然でした。
こうして歴史と合わせて見てみるとより読みやすくなるのではないだろうか。
芥川龍之介さんの作品を読んでいると、つい、
楼にいる老婆の髪の毛を毟って鬘にするシーンがあまりにもインパクトが強すぎた為か、
癖で読んでしばらくは、たまに、(老婆役に入り込んで)
「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘にしようと思うたのじゃ。」
とか言っててたまにつらいです。ええ、時代背景が。
悪い事と思いながらも引っこ抜く老婆、詐欺を働いて生活をせねばならなかった女、
葛藤し、理解をしながらも罪に染まる下人。
誰もが望む美しい世界ばかりではない、
生々しいまでのリアルはこの小説の伝えたい事ではないだろうか?
私にとってそう感じ、考えさせられる一冊でした。
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