私のファッション・バイブル『Real Chlothes』 - Real Clothesの感想

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Real Clothes

4.004.00
画力
4.50
ストーリー
3.50
キャラクター
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設定
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演出
4.00
感想数
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私のファッション・バイブル『Real Chlothes』

4.04.0
画力
4.5
ストーリー
3.5
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

おしゃれって楽しかったんだ

北関東出身の私。通学した大学は山手線内にありましたが、通うのに往復3~4時間くらいかかったので、授業が終わったら即地元に戻ってアルバイト。土日は昼過ぎに起きて、夕方から地元の友人たちと朝までコースで飲みに行く、という毎日を過ごしていました。社会人になってからもその生活パターンはあまり変わらなかったので、当然おしゃれに気を使うことはほとんどありませんでした。「服なんて着られればいい。おしゃれな服を着る人は、顔が良くてスマートでお金を持っている人だけ」。まさにこの作品の主人公、絹江と同じ考え。そして顔が地味で背の小さい小太り、という見た目もほぼ同じ。読み始めたときは「ここに私がいる」と驚きました。 そんな絹江が営業3課婦人服に異動になり、徐々にファッションやコーディネートの面白さを知っていく中で、私も絹江を通してファッションを学んでいくことができました。それまでファッション雑誌は病院や美容院の待合室で読み、毎日の服装のベースは地元で買った古着のシャツとジーンズだった私が、雑誌を買ったり洋服売り場を見たりして流行を探り、安物しか買えなくても流行のものに近いイメージのものを選ぶ、という成長ぶり。特に参考になったのは6巻のヤングカジュアル。レイヤードの仕方、着くずし方のノウハウは、ヤングではなくなった現在も参考にしています。職場で同僚や上司から「服や小物がおしゃれになった」「最近雰囲気が明るくなった」と言われて、おしゃれって顔でもスタイルでも金銭面でもなく、単純に楽しいものだったんだな、と理解できたのは『Real Clothes』と出会えたおかげだと思っています。

実生活に近い背景に共感

描かれている時代背景が、まさに自分が生きてきた激動の時代だったという点も、素早く共感を持てた理由だと思います。就職氷河期、契約・派遣社員切り、リストラと、情け容赦なく襲い掛かってくる不景気の嵐。絹江や他の登場人物たちと同じように、私も嵐の真っただ中で、振り落とされてクビになってしまわないように、必死にしがみついて仕事していました。でも、絹江たちが私と違うのは、少しだけ先を見て頑張っていたこと。慣れた仕事は若手に任せ、自分は新しい仕事を開発する。そして開発した仕事を大きく育てる。絹江は最終巻で自分の仕事を「砂漠の麦作戦」や「リアルクローズ」に大きく発展させていきました。将来に向かって必死に頑張る彼女たちの姿に惹かれたのだと思います。

「いる、いる! こういう人!」と思わず声が出てしまう脇役が多いのも、私にとってハマった要因の一つでした。営業5課リビングのクレーム処理をミスったのに謝れない花田さんや、注意されてもなお品出しが遅い市村さん。私の職場にもこういう人たちがいたので、怒ることができない絹江に「そうそう、そうだよね、怒れないよね~」と笑いながら共感しました。婦人服売り場に来て身体に合ってない7号やMサイズの服を着て、「これが私のジャストサイズ!」と思い込んでいるお客さんたちの姿は、実際に売り場でよく見かけるのですごく滑稽に思えましたし、松越の婦人服売り場にいた怖い顔の販売員のおばさんは、某百貨店で見かけた販売員さんに似ている! と吹き出してしまいました。他にもたくさん面白い脇役がでてきて、細かいところをよく観察しているな、と槇村先生の観察眼に脱帽です。

コイバナをもっと読みたかった

この作品で残念だったのは、女子が大好きな「恋愛話」が中盤でやや細くなってしまったことでしょう。前半で絹江と達也が破局した後、絹江が田淵を好きになっていくのは流れとして自然だと思います。でも、二人が付き合うこともなく、結婚することになったのは唐突すぎるなと思いました。「一緒に仕事をしてきた時間が、二人にとっての恋人の期間」という設定なのかもしれませんが、この現代社会において一度も体の関係を持たないまま結婚するなんて、ちょっと想像しづらいです。 吉永さんとマツタケの関係も、イタリア出張前と出張中の吉永さんの絹江に対する嫉妬は丁寧に描かれているのに、帰ってきたら即復活、即妊娠。吉永さんがマツタケを口説いているシーンだけじゃなく、マツタケが口説き落とされた決定的なシーンも入れてほしかった、と思うのは私だけでしょうか。連載打ち切りが決定して、やむなく最終巻で全部うまい方向へまとめに入った感がぬぐえなかったです。

他のマンガみたいに、スピンオフも入れてほしかったです。例えば、中国に転勤した凌さんの新しい出会いの話とか、林さんと彼氏の話とか、岡さんの家庭の話、双葉先生の次の恋の話、病院で出会った子供たちのその後、達也とハレちゃんのその後、とかとか。思えば槇村作品でスピンオフを見たことがない気がする。槇村先生がスピンオフを描くことをあまり好きじゃないのかもしれませんが、その後が気になる登場人物が多すぎ。個人的には特に、ジーンズを洗われて怒る林さんの年下の彼氏ってどんな人なのか、すごく知りたかったです。

設定よし、ストーリーよし、高い画力で安定感のある槇村さとる作品。『Real Chlothes』は何度読み返しても勉強になる、私のファッション・バイブルの一つです。

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