ドラマとしてはいいが… - アラビアのロレンスの感想

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ドラマとしてはいいが…

4.04.0
映像
4.0
脚本
2.0
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
4.0

   ロレンス中佐の英雄譚としてこれほど有名な歴史映画はないだろう。この映画では、「アラビアのロレンス」と渾名されたトーマス・エドワード・ロレンス(1888-1935)をアラブの解放者という英雄として位置付け、巨大なオットマン帝国体制へ立ち向かうロレンスとその仲間たちの冒険を描いている。

   ロレンスは劇中で情に篤い理想的なリーダーとして描かれている。軍事目標を第一とする軍人がそれでいいのかというツッコミはさておき、隊列から外れた男を独りで探しに戻り、見事戻ってきた感動的なシーンは彼をその後軍隊内で主導的な地位に就けるのに役立てている。

   前半の山場はやはり、オットマン帝国の要衝アカバをアラブ反乱軍がロレンスの見事な指揮で陥落させるシーンである。ここがロレンスの成功の絶頂期であり、このへんからロレンスは顔に翳が出てきて後半にはアラブ反乱軍が大量虐殺にすら走るようになる。暗黒面に堕ちたジェダイの騎士のようでこれは面白いものがあった。

   後半は、ダマスカス占領で物語が終わるが、トライデント顧問やファイサル(ハーシム家出身。のちにイラク王)などの策士がひしめきあい、その掌の上でロレンスが転がり、最後には失意のうちにアラビアを去っていく。その策士たちの上にはさらにデビッド・ロイド=ジョージ(当時の英国首相)やアーサー=バルフォア(当時の英国外相。バルフォア宣言でユダヤ人のパレスティナ入植をロスチャイルドに約束)らの役者の違う策士たちがいることを思うと興味深いものがある。

   ドラマとしては最高クラスの映画で、映像、ストーリーも面白く感動すること間違いなしだが、これを史実だと思ってロレンスを英雄視し、アラブの反乱を正義とするのは大いに異議があるところである。
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