ハリーとトントの評価
ハリーとトントの感想
人間の孤独と自由という、人生の深淵を客観視して描いた秀作「ハリーとトント」
この映画「ハリーとトント」は、アメリカ映画が得意とする、ある人間の旅を描いた物語ですが、これは、アメリカン・ニューシネマのような若者の旅ではなく、72歳の老人の物語です。 長年住み慣れたニューヨークのマンハッタンのアパートのビルの取り壊しにより、市から立ち退きを強いられた主人公の元教師のハリー(アート・カーニー)は、ニューヨークの郊外に住む長男の家に居候するのがいたたまれなくなり、愛猫のトントを連れて、長女のシャーリー(エレン・バースティン)の住むシカゴへ、更に次男のいる西海岸のロスへと旅をして行きます。 このように、妻に先立たれた一人の老人が、既に自立した二人の息子と一人の娘の家に立ち寄りながらも、孤独だが自由な生き方を選んで、愛猫トントと共にニューヨークからロスまでの大陸横断の旅を続けて行く物語ですが、このドラマの底に流れているものは、厳しいものがあります。 しかし、ポール・マザースキー監督...この感想を読む
ずっと残っている作品
ずっと昔に一度観たきりなのに、ずっと忘れられなくて心に残っている映画です。住み慣れたところを区画整理のために立ち退きを余儀なくされたインテリの老人とペットの猫とのロードムービーですが、彼らが旅の途中で出会う人々との交流や、近所の人と何気なくかわす言葉に心が惹かれるものがあります。途中に泊まったモーテルで、ケンタッキーのフライドチキンを食べながら(猫と一緒に)電話をするシーンがあって、電話の相手は誰だか忘れてしまいましたが、健康状態を聞かれて「大丈夫だ。」と応えるシーン、本当はふらいどチキンなんか食べちゃダメなのに、そんなことはもう気にしない老人のおおらかさに和みました。最後のちょっと悲しい結末もありますが、猫好きにはたまらない映画だといえるでしょう。何十年も前の作品なのに、DVD化され、ファンに喜ばれていることも納得できます。