生きることの意味
時代や国、も不明、そして臓器提供のためだけに生まれてきたという主人公たちの設定が、一見突拍子もなく思えますが、最後まで読むと作者の強いメッセージ性を感じることができる1冊でした。
将来の臓器提供を想定し、体を健康に保ち続けることが大切とされてきた、まるで家畜のような主人公たち。好きな仕事につくこともできず、子供を持つことも不可能とされ、彼ら自身が強く感じる場面はないものの、読む側としては彼らの生きる意味は何なのかと考えさせられます。そしてこのことは、現代を生きる私たちにも突きつけられている問題のように感じます。ただ職場と家との間を往復し、結婚や出産もままならず、何となく毎日が過ぎてゆく…果たしてそこに生きる意味はあるのだろうか、と。
しかし作者は最後に彼らに生きる意味を与えます。それは人を愛することです。結局は失敗に終わりますが、提供の猶予の条件とされるのは真のカップルであることでした。つまり生きること=誰かを愛することなのです。さらにラストで明かされる、彼らの教師たちの深い思いやり、これは親からの無条件の愛情を意味します。誰しも生きる上で、親からの愛情を受け、そして誰かと出会い、愛するようになる、そこに人の生きる意味があるのだと作者は伝えたかったのではないでしょうか。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)