設定は面白い。またテーマもシンプルで良い
徳弘正也といえばジャングルの王者ターちゃんだろう。本当にこの人は筋肉が大好きなんだなー。狂四郎2030は現代の遺伝子技術の暴走という科学者が危惧して警鐘を鳴らしているテーマを題材にしている。「狂四郎がバーチャルの世界で出会った嫁を追いかけ、敵の追っ手から逃げながらも最後には巡り会う」というテーマは非常にわかりやすい。このテーマのわかりやすさがあるから読者目線でも非常に感情移入しやすかったのだろう。また、徳弘正也の特徴であるギャグもこの漫画の良い助けとなっている。遺伝子による人種の選別という重いテーマを扱い、殺戮シーンを重ねながらも、こまめに挿入されるギャグのおかげで読み手にとってはあまり大きな負担に感じないはずである。大正時代のエログロナンセンスではないが、やはりエロ&グロの組み合わせは見る者の興味をそそってしまう。それゆえにこの軽妙なギャグが輝き、徳弘正也の代表作となったのであろう。この話の結末もまたうまく仕上がっている。狂四郎が独裁者を倒し、世の中に平和をもたらすなんてオチではこの作品は台無しだっただろう。一個人の狂四郎が自分の愛する嫁だけを助け出し、2人で生き延びるというこの話の締めくくり方は純愛そのものを最後に提示する働きを示し読み手にとって上手い具合に腑に落ちる作品となった。この作品以外に徳弘正也の作品はあまりヒット作に恵まれなかったが、今後もこの重さの中に光るギャグに期待したいと思う。
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