疲れた心を包み込んでくれる日常風景と優しい音楽
梨木香歩原作の小説を映画化した作品です。原作を知っていると、映画にがっかりさせられることも多いのですが、この映画はその心配はまったくないと言ってもいいくらい、素敵な作品に仕上がっています。物語構成や登場人物のイメージはもちろん、行間に漂っていたこの作者のもつ独特の空気感まで映像化されているように感じます。そして、それをさらに盛り上げるのが、野鳥の声が混じる心癒される美しいBGMです。主人公の少女の気持ちの変化に寄り添い、時に優しく、時に激しく、時に悲しく、時に弾むように、自在に私たちを物語の中へ引き込んでいきます。 さらに、多感で傷つきやすく不登校になりながらも、心のどこかに核のような強さを秘めた少女と魔女としての力を秘めていながら、未来を知るのではなく毎日、毎日を楽しむことを大切に生きる英国人の祖母の存在感が際立っています。 魔女というと、おどろおどろしい存在だったり、なんでも願いをかなえるファンタジックな存在だったり、とかく現実味のない印象がありますが、この作品のいう『魔女』とはそういう非現実的な存在ではありません。もちろん、予知などそういった素質を持っていることは持っているのですが、むしろ、自分らしく生き、自分らしく死ぬという英知をもった存在です。こんなふうに生きていきたいと思わせてくれる作品です。
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