生きていることを体で感じよう - 西の魔女が死んだの感想

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西の魔女が死んだ

4.424.42
映像
4.50
脚本
4.50
キャスト
4.42
音楽
4.42
演出
4.33
感想数
6
観た人
5

生きていることを体で感じよう

4.04.0
映像
4.5
脚本
4.0
キャスト
3.5
音楽
4.0
演出
4.0

目次

”おばあちゃん”の存在

タイトルを聞いた時に私は悲しい話というよりも魔女が死ぬということは嬉しい安心感のようなものがこの作品には含まれているのかと勝手に想像した。しかしそれは間違えだった。魔女が悪者という先入観を捨ててからでないとこの作品の深いところまで見る事は出来ないだろう。

この作品で見た魔女の姿は非常に優しい声をしていて素敵な表情を何度も見せた。それは学校に行けなくなった孫をなんとか助けてあげたいという心境から湧き出てきた気持ちな表れだろう。魔女の血が混ざった孫にとって学校という場所は窮屈で仕方がなかった。おそらく彼女は精神的に病んでしまっていたのだろう。彼女のいくつかの発言を通して精神病である私はすぐにその事に気が付いた。この子は、少し考え方や感じ方が私に似ているかもしれない。彼女のような発言を私も同じくらいの時に発していたような覚えがあるのだ。私の実家には魔女はいなかったが仲の良い祖母がいた。物心ついた時から私の側には仕事で忙しい母親の代わりに祖母が側にいてくれた。優しいけどときどき起こると怖い事もある、母親のように私に接してくれていた。おばあちゃん子だった私には、祖母が居て当たり前だといつも感じていた。中学生になると心配性の祖母は毎日私の姿が見えなくなるまで手を振りながら見送ってくれた。そんな祖母に余計な心配をかけてはいけないといつも感じていた。祖父は私が小学生低学年の時に病気で亡くなっている。思い出はあるが祖父の話はいつも祖母から聞いた話だけであまり記憶にはない。そのころ裕福な家庭環境だった私は祖父の偉大さを感じていた。祖父はお酒が大好きで祖母にいつも注意されていた。そんな祖父は15歳も年下だった。姉さん女房の祖母は非常にしっかり者という印象が強かった。だから私が捨て犬を勝手に拾ってきた時に本当に捨て犬か迷い犬ではないのかを近所中に回っていた。捨て犬どと分かった上でお母さんに飼っていいかを聞きなさいと注意されたことを良く覚えている。そしてその犬を飼うことになり、亡くなるまで、亡くなってからも祖母がしっかりと手配していた。テキパキした動きに幼いながらもお母さんより良く動くなと勝手にそんなことを思っていた。それだけ私の祖母はしっかりとした昔ながらの可愛いおばあちゃんだった。

現実と向き合う力➖生きる事と死ぬ事

祖母が良く言っていた。老人ホームに入ったらもう終わりだと、悲しそうな表情で遠くを見ながらよく呟いていた。80歳まで車の運転をしていた祖母にとって老人ホームに一日中ずっと居るなんてことは絶対に出来ないだろうと私もそう思った。同意見だったけど時間が経つにつれて祖母も老いていき彼女にとって嫌な日が訪れた。その日は朝から家の中で泣き出す祖母の姿を私は見ていた。祖母と沢山過ごした日々が蘇ってきて頭の中が思い出でいっぱいだ。必ず遊びに行くからねと言った私の言葉にも祖母は反応しなかった。

誰でも大切な人が側からいなくなる事は苦しい。しかしいつかそれも受け止めなければならない。作品中、魔女は孫に死んだ後は、魂だけ体から抜けて魂だけで存在するのだと言っていた。孫が考えている死んだ後の不安を話してくれた魔女は素敵な人だと思う。普通そのような話をされると死んだことないから分からない、なんでそんな事を考えるの?と逆に質問されることもある。私も小学生の時に同じ疑問を祖母にした事があった。祖母は私の気持ちが情緒不安定な事にすぐに気が付いた。魔女は彼女の疑問に真っ直ぐ向き合ってくれていた。おばあちゃんとはそういう存在だ。そんな大きな存在が彼女の側から居なくなった。でも大きな影響を受けて私達は毎日を生活していくのだ。私は祖母の笑顔が大好きだった。きっと彼女もそうだと思う。

死に向き合うということ

孫のどんな変化にも気付き優しい言葉をかけてくれた魔女は、そっと命をひきとる。魂は体から出ていく。私の祖母もそうだったのだろうか。祖母の命が消えてしまうなんて信じられないしこの世からいなくなる事を受け止める事が嫌だった。もっと色々な事を祖母に伝えたかった。亡くなり息を引き取る瞬間まで側で手をさすり続けていた私は、祖母への後悔ばかりが浮かんできて押しつぶされそうになっていた。涙で前が見えなかった。祖母は一体どうなってしまったのだろう。私は今でも時々考え込んでしまう。彼女が好きだった甘いキャラメルの味を思い出しながら、祖母の存在を時々身近に感じたくなる。そんな時は、もしかしたら祖母の魂が私の近くに居るのかもしれない。

私が死んだら祖母に会えるのか。体のない魂だけで祖母を見つけ出す事は可能なのか。そんな事をずっと一人で考える私は変わっているのか?でも魔女を亡くした孫にはきっと私の気持ちが分かると思う。この作品が始まり彼女の発言を聞いていたら私以外にもこんな事を考える人がいるのかと少し安心したくらいだ。彼女が私の身近にいたら絶対に親友になれそうなそんな気持ちが湧いてきた。

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