青の炎の感想一覧
貴志 祐介による小説「青の炎」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
若干軽めのクライムサスペンス
物語への引き込み感の弱さネットスラングで“中二病”というものがある。ネットスラングだけにどうしようもないものも多いのだけど、この“中二病”という言葉は“病”という言葉を使うことによって実にうまく思春期の頃にやりがちな自己愛的、自己満足的な言動を表していると思う。主人公の男の子は高校2年生でありながら冷徹な理性と知性を備え、自宅ガレージを自ら改造した部屋に籠もり日々調べ物をしている。それは母親の元夫を殺すために。こういった元々のストーリーは決して悪くないと思う。でも彼のしゃべり方や、時折差し込まれる英語(はいいのだけど英語である必要が感じられない故の違和感)、篭ったガレージではバーボンをあおり…といった設定がどうしても“中二病”の少年を想像させ、読む気が萎える。この物語への引き込み感の弱さは貴志祐介の本では、特に冒頭部分によく見受けられる(もちろん100%主観だけど)。その読み手の気持ち...この感想を読む
とにかく切ない
貴志さんの作品の中でも、そんなにホラー色が強くなくどちらかというと人間ドラマです。 読んでみたら一気にはまってしまいました。 主人公の少年が母妹を助けるために殺人をおかすのですが、こんなに捕まらないでと願う犯人はいなかったです。 逃げ切ってほしかったし、彼には幸せになってほしかった。 でも、人生は残酷ですね。 お話のようにうまくはいかない。 そのリアル感がまるで自分のことのようで悲しかったです。 最後は、号泣というか静かに泣けます。 彼がしたことは許されることではないけど、それでも「いいんだよ。」って言ってあげたくなっちゃいました。ぜひ一度読んでほしい作品ですね。
少年の心の描写が絶妙
主人公の少年が家族のために第一の殺人を犯し、それを隠すために二回目は同級生を殺す。その二つの殺人は少年が頭を使い、計画を練ったものだったのだけど、確実に警察は少年を追い詰めます。最後は自分から自転車でトラックに突っ込んで自殺したんだろうな、と思わせる文章で終わっています。死ぬまでに同級生との恋愛なども描かれていて切なさが半端ないです。主人公が優しすぎて、純粋すぎて、生きるのに不器用すぎて、胸が苦しくなるくらい本当に切ないです。映画も観ました。世界観は同じなので映画もお薦めです。映画の方が殺人シーンが衝撃的です。終わり方も切ないです。
私が読んだ小説の中でトップレベルの面白さです
貴志祐介さんの作品は本当にはずれがなく、大好きな作家の一人です。東野圭吾さんのようなトリックものも書ければ、鈴木光司さん(リング)のようなガチホラーも書けますし、ファンタジーのようなものまで書けるので、幅広く才能を発揮している作家さんです。どれも面白いのですが、本作はトリックもの+青春ドラマという新しい試みで、ミステリーの中でも甘く切ない気持ちを感じる作品です。本作は、頭のいい男子高校生の秀一が、家に居座っている粗暴な元夫から母親と妹を守るために完全犯罪を実行していくという倒叙型ミステリー(犯人の視点で書く形式)です!その中で、彼女との青春ドラマや色んな葛藤があり、様々なドキドキが楽しめます。私の最も好きなシーンは、最後別れのシーンで、ヒロインの紀子に「じゃあ、わたしが好きだっていうのも嘘?」と聞かれ、本当は好きなのに「ああ。嘘だ」と答える場面です。初めて小説で涙しました。家族との別れ...この感想を読む