放浪の戦士のあらすじ・作品解説
【放浪の戦士】は、茅田砂胡著「デルフィニア戦記」シリーズの第一作。初版は1993年講談社C★NOVELSより出版、また中公文庫から2003年に文庫版が出版され、2014年にはスペースシャワーネットワークからドラマCDが発売された。 第一巻のあらすじは以下の通り。西欧中世風の舞台・アベルドルン大陸に迷い込んだ異世界の少女・リィは、何者かに追われる青年剣士・ウォルを成り行きから助けてしまう。異界から来たというリィを訝しがりつつも、助太刀の礼に不慣れな世界の道案内を買って出たウォル。しかし彼は政変により王位を追われたデルフィニアの若き王であり、国王派残党の要請に応じ合流を図る道程であった。行く当てのないリィは自然にウォルに付いて行くこととなる。この少女と国王の出会いが、デルフィニアいやアベルドルン大陸全体の歴史を変える事になるとは誰も予想していなかった……。 なお2013年より出版20周年を記念し「茅田砂胡プロジェクト」が始動、舞台公演や演奏会、ドラマCD化とメディアミックスが進行している。
放浪の戦士の評価
放浪の戦士の感想
笑える戦記らしくない戦記!
個性的な主人公主人公は、強すぎる少女リィ。抜群の剣の腕、馬よりも早く走る脚力、塀を飛び越える跳躍力、大柄の男を持ち上げることのできる腕力を持ち合わせている年端もいかない絶世の美女が異世界から突然現れます。異世界に紛れ込む設定はファンタジー小説ではよくありますが、主人公がこれ程までに誰もがうらやむ能力を持っている、という設定にまず驚きます。加えて、その少女と行動を共にする男は、今は反乱軍に制圧されて国を追われたウォル王。このウォルは、リィの能力を目にして驚きはするが、自然とリィを「人とは違う生物」として受け入れていきます。そんな率直な性格のリィと常識にとらわれないウォルのやり取りが非常に笑えます。価値観の違いが埋まる理由異世界から来たという何も知らないリィに、ウォルが1つ1つ説明する場面が多く続きます。しかし、一方的にウォルが説明するのではなく、今の私たちの世界からしたら疑問に思うであろう...この感想を読む
読めばハマる傑作長編ファンタジー
物語のはじめに、どう見ても十二、三歳に見えながら複数の騎士を返り討ちにしたり、馬より速く走ったりと驚くべき能力を見せる子どもが登場します。しかもその子どもは少女の体をしていながら自分はついさっきまで男だったと言い張ります。この序盤の超展開を乗り越えることができれば、間違い無くこのシリーズにはまっていくと思います。自分も序盤の荒唐無稽さと絵によって読むのを避けていた時期がありました。もともとこのシリーズは王女グリンダという作品名で始まったようです。しかし出版社の倒産で執筆を断念し、中央公論社から名前を新たに再開したものらしいです。そのような不幸があったにもかかわらずこのような傑作ができたことを嬉しく思います。
デルフィニア戦記への誘い
初めて読んだ時には、人物設定がやや飛んでいるかと思いましたが、続編を含めて読み進めるうちにいつの間にかこの物語から離れられなくなりました。その長編の初刊が当該本になります。子供が剣を取り、大人を相手に剣劇を繰り広げる??馬よりも足が速く、大人よりも力が強いって、ロボットアニメか何かですか?と感じたのは最初だけ。いつの間にか大国デルフィニアになくてはならない人となるまでの過程が、テンポが速いようでいて決してそうは感じさせない作者の表現力に驚かされます。スピンオフ的な作品も含めて、虜になること間違いナシ。是非あなたもこの作者にはまってみませんか?