笑える戦記らしくない戦記!
個性的な主人公
主人公は、強すぎる少女リィ。抜群の剣の腕、馬よりも早く走る脚力、塀を飛び越える跳躍力、大柄の男を持ち上げることのできる腕力を持ち合わせている年端もいかない絶世の美女が異世界から突然現れます。異世界に紛れ込む設定はファンタジー小説ではよくありますが、主人公がこれ程までに誰もがうらやむ能力を持っている、という設定にまず驚きます。加えて、その少女と行動を共にする男は、今は反乱軍に制圧されて国を追われたウォル王。このウォルは、リィの能力を目にして驚きはするが、自然とリィを「人とは違う生物」として受け入れていきます。そんな率直な性格のリィと常識にとらわれないウォルのやり取りが非常に笑えます。
価値観の違いが埋まる理由
異世界から来たという何も知らないリィに、ウォルが1つ1つ説明する場面が多く続きます。しかし、一方的にウォルが説明するのではなく、今の私たちの世界からしたら疑問に思うであろう点をリィが的確に質問をしていきます。そのことによって、現代の私たちの価値観とデルフィニア戦記の世界の価値観の違いに気付き、ここがどんな世界かわかるにつれ、どんどんその世界に引き込まれていくのです。価値観がわかることで他の登場人物にも自然と感情移入ができます。
親しみやすいキャラクター
主人公リィとウォルの他には、ウォルの敵・味方と多くの人物が登場する。しかし、それぞれの登場人物の感情描写がしっかりされていることで、どんな思考でどんな性格のキャラクターか非常にわかりやすくなっています。今は国を追われているとはいえ、一国の王であるウォルに対して友達のような口調で話すリィに対して、ウォルの味方ははじめ、良い顔をしないのですが、ウォルが全く気にしていないこと・リィの能力を目の当たりにするにつれて、リィのことを認めて信じるようになっていきます。自分のプライドや世間体を考えず、相手を認めてそれを素直に態度に示すことができる人が多くいるため、いやな気持になることなく読み進めていくことができ、どのキャラクターも大好きになっていきます。
安心できるストーリー
戦記とタイトルについているため、国を追われたウォル王が反乱軍から国を奪還するために動いていくないよう担っています。しかし、強すぎる少女リィが味方にいることで、不可能に近いと思われる王座奪還も簡単にできるのではないかと思わせてしまう不思議な力があります。また、無理かと思える壁が立ちはだかっても、リィの能力と運が味方することで次々へと壁を打ち壊していきます。清々しい展開でわくわくすることはあっても、安心して読み進めることができます。
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