銀の檻を溶かしての評価
銀の檻を溶かしての感想
あやかしのものたちの悲しみと居住まい
人間よりずっと長生きするが、成長速度が極端に遅い(詳しくは解説されていないが、少年にしか見えないが数百歳、といった感じ)妖怪が主人公の、不思議な「薬」の店を舞台としたシリーズ第一作。魅力的なキャラクターが織りなす物語で、第一作ということで出会い・序盤といった印象が濃い。特異なキャラクターの造型、設定なども生かし切れておらず、「わかりやすさ」といった点ではかなり疑問が残るが、シリーズとして続けて読んでいくとそうした違和感も薄れる。設定・キャラの特異さは特筆に値する。妖怪もの、半妖・半人ものはジャンルとしてはもともとあるが、人間の側との関わり方、種としての葛藤が「人間よりでなく」表現されていて、興味深い。
キャラクターの魅力にはまります
リアリティーはありません。設定や、推理小説としての謎解きの部分は、「お気に入り」には程遠かったです。ですが、メインキャラクターがとても魅力的なんです。生き生きとしていて、一生懸命で。その魅力にはまって、一気に読み進めてしまいました。推理小説、として以上に、人間以上に人間らしく、人間以上にひたむきな存在の「生きていこうとする」その力を描いた“ヒューマン”ドラマだと思って読むと面白いかもしれません。ドラマ化は絶対にしてほしくない、自分自身のイメージで楽しむのに適した、魅力あるキャラクターの小説です。読んでみてください。お気に入りのキャラクターが必ずいると思います。