恒川光太郎独特の世界観で勝負する幻想的な小説「雷の季節の終わりに」
恒川光太郎の「雷の季節の終わりに」は、評価の高かった「夜市」に続いて、著者独特の世界観で勝負する幻想的な小説だ。現世とは少し違うような 隠れ里での暮らし や 、そこで起きる事件が中心で序盤は進んでいき、 宮崎駿アニメのような、異世界での不思議体験のテイストが存分に味わえ、アニメ映画化しても、かなり支持を得られそうだ。 ミステリでもホラーでもないので、やはり幻想小説というジャンルになると思う。読み始めは、あまりつかみどころのないストーリーという印象だったが、そこで暮らしていた少年がいろいろ学んで、知識を増やしていくあたりから、俄然、面白くなってくる。「 風わいわい」という化け物が、味方に付いているようで、敵との戦いも頻繁にある冒険物語としても、スリルがあって楽しめた。登場人物がいずれもキャラが立っており、それぞれを主役にした話も面白そうなのだが、ページ数の都合なのか、ちょっとずつの描写にとどま...この感想を読む
3.53.5