鬼のようでなく、鬼な人間
年月が経って改めて気づかされたことこの美奥という、幽玄な気配が漂う土地を舞台にした、短編集のなかでも「けのもはら」が印象的で、はじめて読んだときから、ずっと心に残りつづけている。また、あの恐いようで心地よく酩酊するような感覚を味わいたくて、あらためて読んでみたら、登場人物の春が母親を殺したのは覚えていたものの、その内容がすっぽり記憶からぬけおちていたことに気づき、驚かされた。なので、そこらへんははじめて読んだように新鮮に思えたのだが、読むにつれ、何故忘れてしまったのか、理由がなんとなく分かってきた。当時は、子供を殺そうし、失敗したとはいえ、そのあとも平然としていた母親の心理が理解できなかったからだと思う。理解できない親の不条理今も理解できないのは同じものの、子供に身勝手な理由でひどい目にあわせながら、恥ずかしげもなく「しつけだ」と胸をはり「お前が立派になれたのは、育て方がよかったからだ...この感想を読む
4.04.0
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