赤い指の感想一覧
東野 圭吾による小説「赤い指」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
狂気になった親子愛の行方
親子の愛情ってなんだろう?東野圭吾が直木賞受賞後に、執筆した推理小説です。登場人物には加賀恭一郎が登場し、従弟である松宮からの視点と、息子の殺人を隠ぺいした前原昭夫の視点から描いた作品。罪を犯した者の心理と、それを追いかける刑事の気持ちが交互に描かれており、違った視点からみた人間の心情が細かく書かれています。「赤い指」で一番考えさせられるのが、親子の愛情ってなんだろうか?と言う事です。子供に対する愛情は、深く強い愛情ですが、一歩間違えれば、全てを壊してしまうという事を思い知らされました。しかし、ここで言う子供への愛情は、本物の愛情ではありません。前原昭夫の妻である、八重子が子供の直巳に向けた愛は、間違った愛情だと思うのです。子供を可愛いというのは、自分自身のエゴです。それとは反対に自分よりも子供の成長を望み願い、子供に嫌われようとも勇気を正しい道へと向かわせてやる事こそが、親の義務と愛...この感想を読む
今の社会の風刺?
東野圭吾さんの加賀恭一郎シリーズの1冊です。夫、妻、子供、父、母。今、社会問題にもなっている介護や育児、未成年者の犯罪などが風刺されています。認知症となった親の介護、わがままに育てた子供、その親としての責任。崩壊した家庭の中でさまざまな思惑が混ざり、話は進んでいきます。残念ながら、いつ自分の身近に起きてもおかしく無いような、現代的な事件を恭一郎が紐解いていきます。また、加賀恭一郎と行動を共にする若手刑事と加賀の父との関係や展開、恭一郎の刑事としての心配りにも一目がおかれる作品です。タイトルの「赤い指」は作品の最後で出てくる、象徴的な1コマです。
家族ってほんとにそうかなあ? 新しいけど…なミステリ
加賀恭一郎シリーズの中でも、家族のごたごたをクローズアップした本作。時代性に寄り添った家族の造型、なかでも息子と母の関係(祖母と父、母と息子)のいびつさを冷静に描いていて、そこはさすがという感じ。ひきこもりの感じも、過度に病的になったり、オタッキーになったりせず、程良くタチが悪い感じに描かれている(ほめてます)。ある意味「嘘つきを探す」「嘘がどれかを言い当てる」のが目的の話。少ない登場人物の中でひっぱる構成はミステリっぽさを補強していると思う。ただし、結末には自分は不満を持った。無理矢理感が否めない上に、綺麗に回収する必要があったのだろうか?と疑問。認知症に対して、著者の認識が少し上滑りしているのではないだろうか。フィクションですから、現実に即さなければいけない、ってわけではないですが。自分的には少々辛めの採点となりました。
最後の展開に驚きました
中学生の息子が幼い女の子を殺し母親から父親に連絡が入るところから話は始まります。自主させようとする父親と、かたくなに息子を守ろうとする母親。ついに父親が折れ息子を守るために父親と母親は死体を移動させ家族ぐるみでウソをつき隠し通そうとします。一方では優秀なベテラン刑事と新米刑事がタッグを組み動き出します。聞き込みを始め徐々にその家族との距離を縮めていく状況にハラハラします。この作品のキーワードはずばりタイトルの「赤い指」その意味が最後の最後で明らかに・・・・・本当の家族なら私はどうするべきなのだろう。守りたいもののために私は何が出来るのだろう。考えさせられる作品でした。
認知症の身内と、殺人を犯した身内
息子が起こしてしまった幼女殺害事件の隠蔽工作をする男性が主人公です。認知症の母親を事件の犯人に仕立て上げようとする姿は、子供を守りたいという気持ちがあるとはいえ、恐ろしいものがあります。男性には、母親が認知症であるため捕まったとしても刑が軽くなるであろうという打算的な考えももちろんあるのですが、それを差し引いて考えても人間という存在の恐ろしさを感じさせられました。 それぞれのキャラクターは人間の黒い部分を存分に発揮しており、良い人間などこの世に存在するのだろうか、と考えさせられてしまいます。 最後のシーンは、それまでの伏線を見事なまでにすべて拾ってなおかつ納得のいくようなつくりになっていて、感動しました。さすが売れっ子作家さんの作品はしっかりしているなあ、と感じました。