苦役列車の評価
苦役列車の感想
芥川賞だけどなにも残らない作品
他人の日記を読んでいるようで、芥川賞という分類は間違ってはいないと思うのですが、純粋に文学を追求して、人間の深層心理に近づこうとしていた芥川作品と比べるといささか幼稚で、作品自体が優れているかと問われると、いろいろな不純物を抱えている作品だなあと感想を持ちました。西村先生は私小説が主流の作家さんで、こんな人生を歩んで芥川賞作家にまで昇りつめたのか、とその数奇な生き方に、波乱万丈さにはあっぱれします。昔は先生のように日雇いで食いつないでいた方が多かったのか、私が世間知らずなだけなのか、きっと両方なのですが、こうやって必死に生きている人もいる、という新たな発見をしたことで、安穏と暮らす自分の平凡さが少し恥ずかしくなりました。日雇いながら真面目に働き、こつこつと経験を積むことで主人公もあたたかなご飯を食べるまでになるのですが、自分の人生を卑屈に考え、どうせ俺なんか、という気持ちからやる気が失...この感想を読む
芥川賞作品
芥川賞受賞、映画化の話題作。テレビで拝見した西村賢太氏のキャラの面白さに読んでみました。純文学の私小説というので少し難しいかなと思ったけれども以外にさらっと読めました。卑屈で恋人も友人もなく、金が尽きたら日雇い人足におもむく貫多の暮らしを描いた作品。この貫多に明るく前向きな友人ができ、少しは明るい話になるかと思いきや、ますます卑屈で口が悪く嫌われてしまう。こんな青年だが何故か引き込まれていく魅力があり、読み進めるうちに応援したくなってきます。急展開があるわけでもなく友人とも離れ「相も変わらずの人足」で幕を閉じるのは少々寂しく物足りない感じがしました。