なぜか身近な江戸時代
奇談集「耳袋」とそれを記した赤鬼奉行こと根岸肥前を中心とした謎解き時代小説です。 奇談とか怪奇とかいったものが苦手な人でも十分楽しめます。むしろそういった人のほうが 読後感に満足を得られるかもしれないです。 暗闇坂という昼でも薄暗い場所が舞台です。坂が多い町であるがゆえに生まれる怪しげな話 が人の口にのぼるところへ事件が起こります。ここで立ち回るのが根岸肥前とその配下の 者たちですが、彼らは彼らで、のんきなようでもあるし、駆けずりまわることもあります。 実に人間くさいです。決して人間離れしているわけではありません。人とは奇怪な出来事を 生み出してしまう。「見るたびに花の色が違う椿」など彼らもまたそうした人が生み出してしまう 奇怪な出来事に振り回されますが、そこの含まれる人の思いに正面から向き合うことで 解決していきます。 本作はシリーズものですが単独でも十分楽しめます。そして、現代の人々にとっては 当然のことでも、夜が暗かったゆえに生まれた江戸時代の奇談を楽しませてくれます。
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