旅猫リポートの感想一覧
有川 浩による小説「旅猫リポート」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
猫と人間の絆に涙です。
猫が苦手な自分がいつか猫を飼ってみたいと思ってしまった。猫好きの人にも、そうじゃない人にもお勧めしたい一冊。先入観ももたず、気楽に読み進めていったら、だんだん涙腺がゆるんできて涙がとまらなくなってしまいました。いろんな事があったのに悟がとっても明るく前向きでいい奴なのは、たくさん愛を感じられていたからでしょう。ナナと旅をしていく中で、さらに深まっていくナナと悟の絆。後半からは本当に涙腺崩壊です。自宅で一人でじっくり読んでもらいたい。舞台化を前提として書かれた本ということを後から知りました。CSでも最近放送されていたらしい!見たかったです・・
猫のものがたり
吾輩は猫である、とかの夏目漱石の小説にありますが、オマージュといってもいい?ぐらいの作品。主人公は猫。雄猫。とっても頭が良く、ちょっぴり斜に構えた野良の彼の視線は、面白い。猫好きの方には、なかなかおもしろく、あーこういうこと考えていそう!なんて思うことも多いのではないでしょうか。そしてもう一人の主人公、といってもいい、悟(人間)。この一匹と一人の旅が、様々な出会いと共につづられていきます。正直、最後は興醒めしてしまいました…たぶん、他のレビュアーだったり、他のレビューサイトでも、珍しい部類なのかもしれませんが。途中から展開が見え見えで、期待していた分、がっかりでした。お涙ちょうだい的な展開が見えるほど、冷めて行ってしまった感があります。
ラストに向けてジワジワと感動する物語。
大事な飼い猫を、とある事情で手放さなければならなくなった1人の男性。その猫の新しい飼い主を探す1人と1匹の旅の物語です。猫の目線で書かれているけれど猫の飼い主に対する思い、飼い主の猫に対する愛情が自然に伝わるステキな文章になっています。猫の飼い主候補は、男の昔の友達達。どういう出会いで、どんな出来事があってという男の人生が飼い猫候補達に会うたびに分かっていきます。ネコと飼い主候補のペット達とのやり取りも面白いです。人間からみたら吠えてるだけでも、こんな話をしてるんだな~と。数人の候補たちと会う旅なのですが最後に向けて、じっくりと静かにじわじわと感動できる、そんな1冊です。
猫のための旅。
猫目線で書かれた、ひとりの男の人生の一部分の話です。軽妙な猫の語り口は、飼い主であるその男のことを慕ってやまないその気持ちを微笑ましく読ませます。男だって同様、出会った時からその猫を大切に思って一緒に生活を楽しむ毎日。タイトルの「旅」というのは、そんな男がその猫を手放すための相手探しのドライブのことです。その行動の理由はサラッと書く気にはあまりなれません。理由込みで、大切に読んで欲しいなと思うばかりです。きっと自分だって、誰かが私の旧友を見れば、私がどんな人生を歩んできたかが明らかなんだろうな。友達を選んできた意識はないけれど、同性異性、惹かれる相手ってなにがしかの自分にだけわかる要素をもつ人たちだったんだろうと思います。猫を含めて素敵な友人を得てきた男の、幾つかの再会の物語です。終盤は一息に読んでしまいました。