最後の交遊録
エッセイが得意な作家作家のうちには、小説家としてデビューしながらも実は小説よりエッセイの方が得意という人がいます。正宗白鳥、広津和郎、丸谷才一といったところがそうですが、彼らは実は評論家としてのキャリアが小説家よりも長いので、フィクションよりもそうではない文章を書くほうが性に合うのは当然かもしれません。純粋に小説家として文壇に登録されたのに、エッセイの魅力が小説よりまさるという点では、戦前では内田百間、戦後では安岡章太郎がその筆頭でしょう。特に安岡章太郎の場合、初期の作品はともかく、中期以降は小説と銘打った文章までまるでエッセイのような筆致になっていて、もともと資質的にエッセイストなのだなと思わせるものがあります。名著『アメリカ感情旅行』個人的に安岡章太郎の作品で好きなのは『アメリカ感情旅行』で、ここでは異国に対する日常的な観察が文明論的な広がりを持って綴られているのですが、それがいか...この感想を読む
4.04.0
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