慈雨の音の評価
慈雨の音についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
慈雨の音の感想
シリーズ上最も淡々としつつ、日常の事件が最も交錯する巻
一見静かなようで色々な事件が起こる日々慈雨の音は著者宮本輝氏によると、松坂一家周辺の人間への慈しみが横溢していたと感じる巻ということから、その印象がタイトルに反映されているようだ。事業を始めては潰し、転居を繰り返すという落ち着きのない人生を送る松坂熊吾にとって、この第六部は商売的には余り動きがなく、静かな巻だと言える。しかし、その分私生活で起こる様々な出来事は、シリーズ内で最もあわただしい。大きな出来事としては浦部ヨネや香根、海老原太一と言った松坂一家と関わりが深い者たちの死だったり、小さな出来事として伸仁と動物たちの関わりで会ったり、箇条書きにしだしたらきりがないほどの出来事が凝縮されている。フィクションとはいえ宮本氏が父の生きざまと自分の実体験を元にこの作品を書かれているのだとしたら、宮本氏が父上と過ごされた若かりし日々は、なんと多くの経験を積む時間だったのかと改めて驚かされる。ま...この感想を読む