告白の感想一覧
町田康による小説「告白」についての感想が16件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
連鎖
雑誌の連載作品で作者は第一話を短編として書き上げたようです。確かに二度目を読んでみると一話目はすばらしいできとなっています。いや正確に言うと一話でこの物語の骨子を描き二話目以降に真相、心理が深く掘り下げられているようなつくりになっている。映画化されたものも拝見しましたが、やはり陰鬱なイメージは拭われずそして誰も救われない。しかし面白いんです。それはこの物語の持つ陰鬱だけならぬ雰囲気、どこかひどく現実味を帯びたものが私達を襲います。登場人物はかなしながら全員が全員自分のことしか考えておらず所謂自己中心的で、しかしそれこそが人間の本質なのだろうか。という風に強く思わせる作品でした。事件はひとつ、ひとつと積み重ねられていきます、そして迎えるラスト。終わっても誰も、救われない。ミステリーとして非常に質の高いものとなっており、いきなり一話からとてつもない筆力を感じさせられました。本屋大賞受賞との...この感想を読む
誰も救われない
この人の作品は、いつも思うのですが読んだあとモヤモヤ感と後味の悪さが半端ないです・・・ そこを理解して読まないと、あとで非常に後悔し精神的にやられますので気をつけてください。 この本も、そうきたかって感じです。 まず、エイズの血液を牛乳に入れるとか、異常極まりないところから始まります。 本当に洒落にならない気持ちの悪さですが、もっと異常な少年はそのことに動じません。 一人は精神的におかしくなってしまいましたが、人間て本当に恐ろしいなとよくそんな残酷なこと考えるなと嫌になります。 女教師も被害者ではありますが、仕返しにつぐ仕返しをする心は、最初からそういう人だったのではないかと思わせるほどです。人が悲しみに浸るとその行き着く先は憎しみと残虐性なのでしょうか。私はそれは嫌だなあ。 一番大事なものを一番大事なものでつぐなわせる。躊躇なく・・・ いや~怖いです。湊かなえさんに完敗です。
命の重さ。
タイトル通り、最初から最後まで、主人公の告白です。教え子に娘を殺されてしまった主人公が復習と、事の重大さを身をもってわからせる為に教え子を追いつめていく様子を最初から最後まで主人公の目線で、主人公の言葉で描かれています。大事な娘を殺されて、当の本人はそれに対し罪悪感がない、そんな子が、自分のしたことの重大さを知る・・ときにはもう遅い。正直、読んでいてスッキリする部分もありました。悪いことをしたら心から反省しなくてはいけない。それをわからせるとき、ちょとよし!と思ったのは事実です。でも、最後は・・・・本当にこれでいいのかな、とも思いました。
引き込まれるミステリー!!
今や、ミステリー界では有名な湊かなえさん。湊さんの作品で始めて読ませて頂いたのがこの作品でした。本屋さんに立ち寄った際、“このミステリーすごい!”に選ばれていたことと、映画化が決定していた事を受け、非常に興味が沸きすぐに熟読させて頂きました。まず、構成がとても面白かったです!1節1節、違う登場人物から見た視点で記載されていること。特に第三章「慈愛者」は、少年Bである下村 直樹の母親の日記形式で書かれているのが、とても新鮮で面白かったです。今までにない、誰も正義ではなく、担任の森口も最後まで復讐に徹底しています。そして、中学生という一番多感な時期に、過去の生い立ちにおいて、母親との関係に心の傷を負ってしまった少年Aが、森口によってはめられた罠とは・・。私は映画より小説派です♪
独白だけで表現された衝撃的なストーリー展開に驚愕
この作品で一番衝撃的だったのは、事件の真相でも驚愕の結末でもなく、人物たちの独白だけで凄まじい人間模様と強烈なストーリー展開が表現されていたことだ。それぞれの人物像や心境が独白の中からにじみ出ていて、生々しくも禍々しい人物像や背景でじわりじわりと進行していく復讐劇にどんどんと引き込まれていった。人間誰しもが抱えている闇の部分・醜い部分が事件を通じて暴かれていき、個人個人の独白なのにそれぞれに伏線が仕込まれていてそれが絡みに絡み合って最後の衝撃的な結末へと繋がっていく展開は読みごたえがあった。主人公の行為や最終的に選択した結末は賛否両論あるだろうが、ある意味とてもリアルで人間味のある復讐劇だと感じた。
復讐が怖い
女教師が子供を生徒に殺されて、その生徒たちに復讐する話です。一番印象的だったのが、女教師が「生徒に子供を殺された」とクラスで話した所為で学校に行けなくなり、精神的に病んでいき、最終的に自分の母親を殺してしまった男子生徒です。病んでいく過程など丁寧に描かれていて怖かったです。その男子生徒の救いは、その子のお姉ちゃんが、男子生徒の日記(精神が病んでいく過程が書かれていた)を読み、罪を軽くするために動こうとしていたところでしょうか。最初は面白くてどんどん読み進めたのですが、最後になると、子供が不幸になる話に心が暗くなりました。凹みます。後味が悪いです。
話題沸騰になったミステリー
一時期流行り映画化もしたこの作品。私には正直あまり合わなかったです。復讐譚ということはあらすじから知っていたのですが、なかなかにエキセントリック(意図的に衝撃的であろうとする)感じがしました。私にとってはそれが、驚きというよりも、不快な違和感しか残りませんでした。確かに展開に驚かなかったといえば嘘ですが、どちらかというとネガティブな驚きでした。期待していた分、余計にがっかりしたのもあるかもしれませんが、なかなかに読みにくい作品でした。ただ、構成などは素直にすごいなと思いましたし、執筆スピードも速いようなので、作者のこれからに期待したいと思います。
ぞっとした。
文章の書き方もきっと影響されているのだと思いますが、主人公である女教師が何を考え、誰をターゲットにしているのかがわかりにくく、物語の語りが淡々としていてぞっと感じました。だからなのかはわかりませんが、一度読みだしたら止まりませんでした。映画化されたのは知っていましたが、そちらは見ておりません。知人が見たところ、原作であるこの小説とはなんとなく雰囲気が違ったんではないか、と話してくれました。私のこの作者の書き方へのイメージは、一度読んだらはまりこんでしまう文章力と物語の構成。最後までどきどきと読み続けられる個性的な作者だと思っています。
いろんな意味でおもしろい。
中島哲也監督で映画化され、話題になりました。私も映画を見てから小説を読みました。ストーリーはクラスの生徒に娘を殺された女教師、母親に認められたい少年、殺人者に憧れる少女を中心に進行していく。少年犯罪への罰の甘さや、集団心理など考えさせられる部分も多い。悪意と情、打算に満ちているので嫌いな人はいると思う。私は面白い話だとは思った。ただ、すかっとする話ではあるかもしれないけど、キャラクターがみんな物語を進行するために存在する駒っていう感じが出過ぎてる気がする。どんな感想を持つにしても、1度、読んでみて損はない作品だろう。読むのに時間もかからないのでおすすめだ。
悪意の犯人の方にも感情移入できる
映画化もされ、高く評価された「告白」の原作です。映画と変わらず、こちらもおもしろいです。どちらかと言えば自分は映画のバージョンの方がよくまとまっていておもしろいと思いましたが。娘を生徒に殺された先生の復讐劇です。人間のどろどろとした感情が浮き彫りになっていて大変おもしろく読ませていただきました。犯人二人の方にも感情移入できるんですよね。それはこの本がそれぞれの告白、という形式にそって進めているからだと思います。やばい、と思っているのに、勢いで一線を越えてしまう、そんな経験誰にでもあると思います。その時の変な昂揚感、不安感、全てを描き出しています。今まで読んできた本の中で十本の指には入るくらいにおもしろかったです。
牛乳を飲むのがちょっと怖くなったw
教え子に娘を殺された女教師の復讐の物語。第一章を読んだ時点で、「ここで終わっても良かったような」という気もしたけれど、それ以上にその後の展開が重く、けっきょく最後まで一気に読んでしまった。タイトルは「告白」だけど、復讐された生徒たちは自分の罪も悩みも告白できずに悩んでいる。出てくる人物がみな孤独で、被害者の側に感情移入しながらも、だんだんと語られていく加害者側の心情にも同情してしまう。最後まで暗い内容ではあるんだけど、そこまで悲壮感がなう読めるのは文体がいいからか。このあとちょっと牛乳を飲むのがちょっと怖くなった(笑)あと、欲を言えば「A」の母親と教師の会話シーンが見たかった・・・
最初から最後まで衝撃でした
1年B組の担任をしている森口悠子は終業式の日に、クラスのみんなの前で、自身の娘の愛美は「事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺された」ことを告げます。映画化もされ、これをみて衝撃を受けた人も多いかもしれません。本の世界では映画では表すことが出来ない残酷で衝撃的な描写がたくさん出てきます。恐ろしくもあり、それが本の世界での告白の魅力だと思います。文章の特徴もそれぞれの人物の性格が出ていて、殺人という対象への色々な見方を考えさせられる作品でした。ひとつの事件で様々な人の人生が変わっていきます。目をそむけたくなるような真実に私はどんどん引き込まれていきました。
恐ろしいけれど納得もしてしまう。
自分の子供が殺された中学校の先生が自分のクラスの生徒を疑い、犯人をみつけ復讐する。そんな設定、聞いただけで恐ろしいです。そして、道徳的には復讐はダメだろう、しかも先生が。というのが一般的な考え方でしょうが私も子供を持つ母親だからかもしれません。復讐のところでは、因果応報という言葉がアタマをよぎりました。決して読後感がいい爽やかな小説ではないことは確かですが読み応えがあります。衝撃的な先生の告白からどうやって犯人にたどりついたのかの経緯、そして復讐のシナリオ。最後まで息をひそめながら読みきったという感じです。犯人の中学生の描写は、本当に恐ろしかった。子供ながらの無邪気さゆえの残酷さ。情緒が子供なのに、頭脳的(ズル賢さ)には大人並み。子供を持つ母親としては、考えさせられることもあります。
これわすきだ!
この作者の書く小説わこれ以外わ読んだことないけど、すごく画期的で新しい書き方だな、と思いました。主人公をはっきりさせて書いているのでわないんでしょうね。1つの出来事に対してだけど、色々な人目線でのその出来事の見方。そして最後まで導いてくれる。ただ、少しくどいとゆうか、じれったい部分もあったと思います。答えまでわざと回り道をさせている感じがあったので先にオチを見たくなり、物語に集中できないこともありました。あ、私が個人的にそおゆうのが苦手なだけなんですけどね(笑)でも、物語としてわ私好みの内容、展開でした。他の彼女の作品もおすすめのものがあるなら読んでみよーかなー。
衝撃的な話ですが、読み応えあります
数年前に映画化もされた、著者の代表作といっていい、傑作です。題材が、子供の死なので、設定としては、気持ちのいいものではないのですが、とにかく、しょっぱなから、ぐいぐいと物語に引き込まれます。この文章力というか、構成力には脱帽します。ただ、主人公の女性教師は、かわいそうではあるのですが、感情が見えてこず、結局の所、何を望んでいたのか、誰を罰したいのか、そこの心理描写が今ひとつかと思いました。犯人役である中学生には、この年代の子供が持つ、無知で幼いがゆえの、空恐ろしい冷たさを感じ、そのあたりの描写はうまいと思います。題材が題材だけに、読後感が悪いのですが、ストーリー構成や読ませる力、といったところで4点をつけました。
母の一念
復讐はいけないことです。それは少なくてもこの日本では常識でしょう。それが道徳的な思考というものでしょう。たとえ家族を殺された遺族であっても、犯人の死刑を望むと口にしてしまえば、それは当然、無理もないことと同意をする人々ばかりではなく、殺人を否定しながら死刑という殺人を望むのか、などど非難をする人々も存在します。反対に、犯人の生涯を通しての真摯な反省の態度と更正を望むとコメントをすると、美談のようにその心の広さを称えられる場合もあります。これは子を失った母が繰り広げる復讐の物語。その計画は緻密でぬかりがありません。本当は喜んではいけないのであろう復讐の成功ですが、私も子を持つ母。ラストで「してやったり」そんな嬉しさを感じました。一つ残念なのは登場人物の生徒やその母親達が、極端に歪んでいると感じる点でした。多少、リアリティーに欠けてしまったと思います。しかし伏線が見事で久しぶりに爽快感すら...この感想を読む