手紙の感想一覧
東野 圭吾による小説「手紙」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
それでも生きてゆくために、加害者家族がすべきこととは
「差別をなくす」のではなく「差別による苦しみを軽くする」には人が罪を犯した時、本人が責められるのは当然だが、その家族まで差別されることは、本来ならあってはならない。親は責められることもあるが、例えば兄弟の場合、同じ親の下に生まれたというだけで、弟が兄の罪を責められるいわれはない。特に弟が未成年の場合なら尚更だ。それでも現実は厳しい。差別は許されないというのが理想に過ぎないことは、過酷な差別の実態を思い浮かべればよくわかる。世間を震撼させた事件で、加害者家族が仕事や結婚をあきらめざるを得なくなり、命を絶つ場合もあると聞く。この小説も例外ではなく、武島直貴は強盗殺人犯の弟というレッテルを張られ、音楽の道や恋愛、やりがいに満ちた仕事を断念せざるを得なくなってしまった。そのような差別に直面しても、死なない限りは生き続けなければならない。ならば、どうやって生きていけばいいのだろうか。差別をなくす...この感想を読む
切なく、グッととくる兄弟愛に泣かされました。
天津甘栗の所が泣ける剛志が盗みに入って天津甘栗が置いてあったのを見て、思い出に浸んでしまった事が、剛志の誤算であった。僕も天津甘栗が大好きで小さい時に母がいつも天津甘栗の皮を剥いてくれた。それさせなければ、剛志は殺さずに刑務所にいかずに済んだのにって初めは思いましたが、だが、上手くいったとしても、お金がないと思えば、必ずまた同じことをして、捕まり刑務所に入る事になるんだろうなって思いました。剛志はいい人、それとも悪い人。剛志は弟の為にしてしまった事が刑務所に入る事になってしまった。例え理由が直貴の事を思ってした事かもしれないが、それが、かえって直貴に迷惑を掛けて苦しめることになると思わなかったんだろうか。服役している時にでも直貴宛に手紙を送ってくる事じたいが、封筒が刑務所からと送られてきている事が分かって差別を受ける事も考えないのだろうか、恋愛でも人を一途に思っているは聞こえはいいが、...この感想を読む
「手紙」から分かる私刑の現実ーいつか「イマジン」の世界になることを信じてー
「失敗は成功のもと」は殺人には通用しない「人は誰でも間違えること、失敗することはある。だから、間違えてもいい。でも、その間違えをきっかけに人は成長しなければならない。」小さい頃から祖父にそう教えられ、何度も言われてきました。私自身もそう思って生きてきました。けれど中には、間違えても絶対にしてはならないことがあります。そのことをこの本『手紙』によって痛感しました。「殺人」という過ちの重みは、何をしても償うことはできません。人にはしてもいい失敗と決してしてはならない失敗があるのです。人には心があります。道徳があります。幼い子どもでさえ分かります。人間だから分かるのです。人間だから犯してはならないのです。人の見る目人間は人と違うことをするだけでその人を見る目が変わります。どんな学校にも校則は必ず存在しますが、その校則を破り髪の毛を赤く染める生徒がいたら、どんな生徒であろうと、周りの人間の見る...この感想を読む
加害者になるということは、どういうことなのか
加害者と残された家族自分の兄貴が加害者になってしまった。加害者の家族となった主人公の直貴。その日から一変する生活と環境、そして世間の風当たり。それでも兄の更生を信じながら真面目に生きていこうとするが、加害者の家族であるという事実が直貴の人生に立ちはだかる。刑務所から送られてくる兄の手紙を読みながら、直貴の兄に対する気持ちや自分の将来について、次第に変化を持ち始める。加害者であることがどういうことなのか、その事実を受け止めているのは牢の中に入っている兄ではなく、真面目に社会で生きようとしている直樹自信であった。世間からの非情なほどの風当たりに、なんでそうなるのだと主人公と同じように思うのだが、加害者になってしまうということはそういうことなんだと考えさせられました。罪のない人の命を奪った兄の更生への道と、真っ当に生きようとする弟の未来の行く先家族の生活のために犯罪に手を染め、罪のない人の尊...この感想を読む