医者の話ではない。人間の話をしているのだ。
栗原一止
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映画レビュー数 5,784件
時間を持て余して映画館に行って、なんの事前情報もなく観たせいだろうか。この作品が、現役看護師である私にとってこれほど、心揺さぶられる作品になるとは思ってもみなかった。正直、昨今の医療をテーマにした作品には批判的であった。ほとんどの作品は非現実的で、医療従事者の心の葛藤や現場の厳しさは置いてきぼりだと。しかも主演はアイドルグループ嵐の、櫻井翔さん。失礼ながら、アイドルの演技力を侮っていたことも事実である。スクリーンでの医師は、若くして最高の技術を取得した「スーパーヒーロー」みたいな扱われ方が多いと思う。それに比べるとこの作品で描かれる医師はかなり現実に近い。毎日、激務に追われ休む暇もない。身なりに気を遣う間もなく、日々命と向き合う現実の重さに葛藤し続ける。私自身、同じような激務の中で、なかばあきらめにも近い感覚を持ち始めていた。慣れればなれるほど、だめだと思いながらも医療行為は事務的にな...この感想を読む
医療映画だけれども終始その話ではないので見やすい作品でした。櫻井さん演じる一止さんの医療に対する思いが加賀まりこさん演じる安曇さんに出会うことで医療に関する考えが変わってきたように感じました。大きな病院で見てもらい治療を勧めるも「ここにいさせてください」と懇願する安曇さん。どうやっても治らないというのが自分でもわかっており、すぐに退院を促されたり人間のつながりをあまり感じられなかった大きな病院は嫌だったのかなと見ながら胸が熱くなりました。ちょうどこの映画の少し前に自分の身内もガンで亡くなり、入った病院が患者と看護師・医師のつながりの強い病院だったので、そのことを思い出しました。
櫻井翔演じる一止、宮崎あおい演じる榛名の夫婦が出す空気感が何とも落ち着く作品です。一止はお医者さん。文学青年というか、話し方が独特だけど全然違和感がない…。不思議。物凄く忙しい内科医で、だからこそ榛名の存在が大切なものなんだろうなと思います。あ、髪型も独特。一方、榛名は山岳写真家という、これがまたそうそう出会える感じではない職の人。そして佇まいも選ぶ言葉もしっかりしてて、それでいて押しが強いとかではなくて優しい。こんな人になってみたい。一回。これは宮崎あおいしか出来ない役柄だと言っても過言ではないのではないでしょうか。安曇さんというお婆さんの患者さん。一止に多くのことを学ばせてくれた人です。この人がどうなるのかというのも、私にこの映画を最後まで目が離せなくした大きな理由です。御嶽荘の人たち。一止にこういう仲間、絶対必要だよね…と思わせる、妙な説得力を帯びた雰囲気を持っていてくれる人たち...この感想を読む
栗原一止
患者の気持ちを第一に考える一止と、経営のことしかかんがえていない病院側が対立したときの一止の言葉。もちろん専門職としての倫理観は大切だが、専門職である前に、人間でなければよい専門職とは言えないということを実感させられる。