仕立て屋の恋の評価
仕立て屋の恋の感想
男の純情とジーザスは原点が同じか
原著がジョルジュ・シムノン、彼の小説はアンニュイで激しいときめきを押さえこんだストーリ展開が素敵だ。シムノンの原作と同じくらい、魅力的な気品を持った作品に仕上がってる。以前強制わいせつ罪で捕まったことのある仕立て屋イール氏(ミシェル・ブラン)孤独な中年男、地域に貢献するために仕立て屋してて、中庭をはさんだお向かいのアパートの美しいアリス(サンドリーヌ・ボネール)の生活を、見ている。夜毎、電気もつけずにただ眺める、彼は彼女に恋いしてる。ストーキングとは違うんじゃないだろうか。とにかく好きなのよ。彼女は彼が自分を好きなのを気がついてる、すごい演技と演出ですよ、触れるか触れないかの肌、見ているとひりひりと痛い。相手役を演ずるサンドリンはフランスを代表する女優さん。この人の顔の演技は何時見ても、何も言わなくても全てを語らせることが出来る。睫毛だけでも演技が出来る類まれな資質を持った人。演技する...この感想を読む
魔性の女を描くのが上手
パトリス・ル・コント監督の映画には、魔性の女がよく出てきます。男性の心をガッツリつかまえる様子は、ちょっと恐ろしいなと感じる一方、私もこんな風に男を翻弄してみたいとも思うのでした。仕立て屋のイールの冷たい感じの外見、無機質な雰囲気の彼の仕事場などが、向かいのアパートのアリスの艶っぽさとは対照的で、彼の内から込み上げる熱い恋心を強く感じさせているように思います。ハサミで布を裁つシャープな雰囲気が映像全体にあり、ストーリーというよりはイメージを鮮烈に残す作品になっていると思いました。恋愛というものは、何が良くて何が悪いとは言えないものがあります。恋愛して傷つく事と、恋愛しないで孤独に暮らすのと、どちらが良いか選べないように…。