古風な女の哀れをイタリアの叙情派マウロ・ボロニーニ監督が心をこめて描く 「愛すれど哀しく」
このイタリア映画「愛すれど哀しく」は、切ない映画だ。古風な女の哀れをイタリアの叙情派マウロ・ボロニーニ監督が、心をこめて綴った佳作だ。可憐な洗濯女ベルタ(オッタヴィア・ピッコロ)は、パン屋の職人ブブ(アントニオ・ファルジ)を愛したばかりに、夜の女へと転落していく。ブブはやくざ気取りの無知な若者で、今やベルタのヒモとなり、稼ぎが悪いと殴りつけもするのに、彼女は彼にしがみつく。この恋しい男を、たとえ神様にだって渡すものかと一途に思っているのだ。川端柳が揺れる踊り場の風景や、厚化粧の商売女が自殺した仲間を送る昼下がりの葬列、そして、女たちが客を奪い合う雨の夜の街かど。20世紀の初めの風俗描写は、匂いこぼれるほどの懐古ムードに満ちあふれている。この映画の原作は、フランスの貧民作家シャルル・ルイ・フィリップの「モンパルナスのビュビュ」で、むろん小説の舞台はパリだが、映画はそれをイタリアのミラノの下町に...この感想を読む
4.04.0