ひねくれ一茶の評価
ひねくれ一茶についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
ひねくれ一茶の感想
一茶爺さんの健脚ぶりに驚嘆。
江戸俳諧の巨人・小林一茶の半生を豊富な連句・俳諧を交えて描き出す長編。飄々とした句風、息をするように詠まれたというほど多い俳句の数々からは思いもよらない、自身の生涯の苦境が、著者独特のユーモアに支えられながらも、淡々と描き出されている。身内との縁薄く、長く続く遺産争いや、俳諧の宗匠としての収入を得るための門人訪問など、とにかく生涯歩きづめの一茶の健脚ぶりには実に驚かされるばかり。晩年まで家族を求め、諦めなかったその人物像に、成されなかった家族の平穏無事な生活への思いの強さが忍ばれる。一茶の実家は現在の長野県。そこと江戸とを50歳を過ぎて尚旺盛に行き来したというのだから、なんたる頑丈さ。「これがまあ終の栖か雪五尺」の句の味わいも新たになる、力作であります。