M/Tと森のフシギの物語の評価
M/Tと森のフシギの物語の感想
M/Tと森のフシギの物語を読んだ感想
神話的世界と民俗学的世界の融合この大江健三郎の小説「M/Tと森とフシギの物語」は祖母から昔話を聞いた主人公が自らの在り方をその言語的イメージを内面で何度も反復するという反民俗学的思考実験と、それを神話体系に当てはめて現代における個人の神話を解体しようとしたフシギな物語である。自らの個人的な体験から小説家としてある種の転向を続けている作家が、「万延元年のフットボール」以後、神話的物語やSF的な物語と自らの内面的思考を合わせることをテーマとしてきた結果、奇妙な戦争小説が生まれた。妄想戦争小説というジャンル大江健三郎の特徴は戦争を幼少の時に体験しながら、それをテーマにした作品を自らの作家人生においては葬っているということだ。その結果、個人的な経験や体験からその体験を神話的民族的SF的な物語の枠組みででっち上げるという手法を自らのスタンスとして取り、文章自体も初期のころに持っていた詩的言語が衰退し、...この感想を読む