ベリー・タイニー(ちいさなちいさな)・ストーリーズ。
「雪沼」という土地の周辺に暮らす人々の、些細でささやかな営み、成り行きを描いた7つの短編からなる短編集。 収録作はどれも同じ土地が舞台と思われるが、ひとつひとつのお話は独立していて、直接的な関連(登場人物が同じ、等)はない。 田舎といって差し支えない規模の町で、人々が出会う事象、事件、人生の成り行きが、丁寧な筆致で綴られていく。 アップダウンの激しい乗り物のような文章がお好きな方には、本作は読みづらいかもしれない。 堀江敏幸の第一の特徴は、そのセンテンスの長さであり、巧みさであるからだ。 一文がとても長いが、その言葉遣いの美しさ、呼吸のようなものになじむと、えも言われぬ心地よさを感じられる。 注意深く、急がず、お話の最後のページまで辿り着くたびに、ゆるやかな流れのなかに「あっ」と思わされるところがひそんでいる。 うっかり見落としてしまいそうな、ちいさなちいさなものを読者に見せてくれる、珠玉の短編集だ。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)