伝承を聞くように、耳をすまさねば。
2巻の「王獣編」で書き切った、と一度は筆を置いた筆者があえて書きだした、「獣の奏者」のその後の物語。 その後といいつつ、ストーリーの根幹を探るべくエリンが旅をする、続編というより文字通り「探求していく」話になってます。 ここから突然読み始めても入ることは可能かと思いますが、ぜひ1・2巻を読んでからの読書がおススメです! このシリーズでいつも思わされるのは、物語の設定とその世界観の圧倒的な重厚さ。 本来ファンタジーは苦手なのですが、ここまで細かく、合理的で、かつ人の脆さや弱さをかかえこんだ話を考えられる、作者はものすごい人だと思います。 ひとつひとつの土地や道具、生き物の名前に至るまでが、するっと飲み込める説得力をたたえていて、唸ります。まるで本当にある、世界のどこかの伝承を口伝で伝えられているかのよう。 異世界でありながら、切実な歴史の積み重ねの上に、登場人物たちが確かに立っている、そんな実感のある小説です。
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