カウンセラーの罪とマルキナの罪 - 悪の法則の感想

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カウンセラーの罪とマルキナの罪

4.24.2
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.2
音楽
4.0
演出
4.0

目次

見栄っ張り

彼女に婚約指輪をあげるために、コカインの密輸に加担するわけですが、弁護士の仕事をしていればそれなりの収入がありそれに応じた指輪を買えるのに、そのことに満足できずに自分の能力以上のものをほしがってしまいます。もしや彼女が大きなダイアを欲しがっているのかと思いきや、プロポーズのシーンを見ると喜んではいますが、ダイアの大きさに驚いている様子から、彼女がねだったのではないことが伺えます。

そうなると、彼女のためももちろんあるでしょうが、あのドラマチックなシーンのため、自分顕示欲のためにに大きなダイアモンドを買ったように思えます。

彼女に甲斐性のある男だと思われたいのは言わずもがなで、それを着けて歩く彼女の周りから「あなたの彼ってすごいわね」と言われたい気持ちがすけて見えます。

危機管理能力がない

ダイヤモンドのためにマフィアと手を組む時点でどうかしていますが、そうすることで死ぬかもしれないという気持ちが全くないことには驚かされました。ウェストリー(ブラッド・ピット)に相談した際も、「本当に知らないんだ」を繰り返し、自分はブツが消えたことに加担していないのだからどうにかなると信じています。ウェストリーにも言われていますが、そんなことよりも一刻も早く逃げるべきです。

世間知らずに見えてしまうカウンセラーですが、いわゆる民事だけをやっている弁護士でもなさそうなので、反社会組織の恐ろしさを一般人よりも知っているはずですが、その半端な知識がかえって死を覚悟させなかったのかもしれません。

いつもこの場面で思い出すのが、「日本で一番悪い奴ら」という映画です。この映画も、コカインを途中で取られてしまうのですが、主人公はボコボコにされるだけです。そのタイトル通り「日本で一番」、海外は比べ物にならないほど恐ろしいなと思わされます。

見た目がいい

カウンセラーはハンサムですが、それだけではなく信頼できそうな雰囲気を持っています。その証拠に、綺麗な婚約者や、マフィアの仕事を紹介する友人がいるわけですが、端的に他人を信用させる能力を発揮しているのは、携帯電話を借りるシーンです。切羽詰まっているのを隠し、適当な嘘をついてそこらへんにいた女性に電話を貸してもらう、貸した女性も不信感など微塵もない様子ですから大したものです。

電話を貸すくらいならいいですが、伴侶や危険な橋を渡る相手としては、カウンセラーは不適格です。婚約者も友人も、見る目を誤まってしまいました。

唯一、婚約者の前で「あれ?」と思わせるのがポロを観戦するシーンです。具体的にカウンセラーがなにをしたかはわかりませんが、不誠実なことをしたことは確かです。しかし、プロポーズを受けた後では、時すでに遅しと言えます。

欲望のままに生きる女

カウンセラーも欲の多い人間ですが、マルキナ(キャメロン・ディアズ)との大きな違いは、他人の目を気にするかどうかです。マルキナは他人の目を気にするどころか人を人とも思わない、「感情に温度があるの?」なんていう人間です。

劇中では具体的に誰がコカインを横取りしたのか描かれていませんが、最終的にマルキナがおいしい思いをしているのは、ウェストリーを殺害しているところから想像できます。恋人のライナーも実質マルキナが殺したも同然ですが、利用するだけ利用した後はどうなろうと知ったことかです。

どちらがタチが悪いか

マルキナはまごうことなき悪女ですが、見るからに悪女です。危険な匂いをプンプンさせています。だから、ライナーもそれをわかっていて、覚悟の上で一人で逃げます。

一方、カウンセラーは悪いことなどしなさそうで、マフィアに加担している最中でも、あんなドラマチックなプロポーズができてしまうほど無邪気です。婚約者からしたら、急に危険が迫りあっという間に無残に殺されてしまいます。

考えてみると、カウンセラーの方が厄介な人間です。

マルキナのヒント

プールサイドのシーンで、婚約者の指輪を見ながらダイヤモンドのランクや値段についての話をしたり、「あなたの世界って不思議ね」という意味深なこと言います。マルキナからすれば、ヒントなどではなく、「こんな大きなダイヤモンドもらってなにも気にならないのね」という単純に疑問なのでしょうが、無残に殺されてしまう婚約者のことを考えると、このヒントから推理して指輪だけ持って逃げたらよかったのにと思わずにはいられません。

「悪の法則」とは

ちなみに、原題は「The Counselor」でカウンセラーまんまです。カウンセラーが右往左往する話なのでこのままでもよかったのでは?と思っていました。

しかし、マルキナがいたことを考えると、カウンセラーがバイカーを釈放させていなくても、この取引は失敗に終わっていた可能性が高いです。失敗=死なので、カウンセラーがこの取引に加担した時点で、婚約者の死は決まっていたと言っても過言ではありません。そう考えると、悪の法則という題名がしっくりきます。

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世界の本質を描いた傑作サスペンス!

退屈に感じる前半部分にこそ注目一般的な評価の低い今作ですが、私は全力でこの映画を擁護させていただきます。この映画の感想として、「前半が退屈」「会話シーンがダラダラしすぎ」などの意見があると思いますが、前半部分の会話シーンにこそこの映画の重要なテーマが語られています。この映画のテーマは「全ては最初から警告されていた」ということです。この映画の原題は「The Counselor」。直訳すると弁護士で主人公のことを意味しているのですが、「counsel」で「忠告、助言する」という意味になります。つまりこの映画は、この世界を理解した気になっている「counselor(主人公)」に対して映画全体で「counsel(忠告する)」という映画なのです。2回以上鑑賞すれば、前半部分の会話シーンが全て後半の悲劇的な展開を警告していることがわかります。オープニングでの主人公と彼の恋人ローラとのベッドシーンの前から、バイクのモーター音で警告され...この感想を読む

5.05.0
  • 江戸くれいん江戸くれいん
  • 198view
  • 2070文字
PICKUP

豪華キャスト

なんといってもキャストが凄い!!その中でもキャメロンディアスの悪とエロスの部分が存分に出ているところにくぎ付けになった。他にもブラッドピット等、豪華キャストが出演しているにも関わらず、私と同姓であるキャメロンの魅力に惹かれた。この映画でのキャメロンはチャーリーズエンジェルの時とは全く別人であるかのキャラクターである。フェラーリとのSEXのシーンなどぶっ飛んでいる。一般的に考えてフェラーリとSEXするなんてばかばかしい話であり、想像すると笑ってしまいそうな行動である。フェラーリでSEXであればまだポルノでもありそうな気がするがフェラーリとなのだから印象に残らないわけがない。映画内でもこのシーンはある男の心に残るものとなっていた。映画全体で最も重要なシーンではないとは悪の法則の1つに該当するシーンの1つであると感じた。そして女性を虜にするブラッドピットは殺されてしまうのであるが殺され方が卑劣である。じ...この感想を読む

4.04.0
  • wMwM
  • 109view
  • 547文字

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