カウンセラーの罪とマルキナの罪
見栄っ張り
彼女に婚約指輪をあげるために、コカインの密輸に加担するわけですが、弁護士の仕事をしていればそれなりの収入がありそれに応じた指輪を買えるのに、そのことに満足できずに自分の能力以上のものをほしがってしまいます。もしや彼女が大きなダイアを欲しがっているのかと思いきや、プロポーズのシーンを見ると喜んではいますが、ダイアの大きさに驚いている様子から、彼女がねだったのではないことが伺えます。
そうなると、彼女のためももちろんあるでしょうが、あのドラマチックなシーンのため、自分顕示欲のためにに大きなダイアモンドを買ったように思えます。
彼女に甲斐性のある男だと思われたいのは言わずもがなで、それを着けて歩く彼女の周りから「あなたの彼ってすごいわね」と言われたい気持ちがすけて見えます。
危機管理能力がない
ダイヤモンドのためにマフィアと手を組む時点でどうかしていますが、そうすることで死ぬかもしれないという気持ちが全くないことには驚かされました。ウェストリー(ブラッド・ピット)に相談した際も、「本当に知らないんだ」を繰り返し、自分はブツが消えたことに加担していないのだからどうにかなると信じています。ウェストリーにも言われていますが、そんなことよりも一刻も早く逃げるべきです。
世間知らずに見えてしまうカウンセラーですが、いわゆる民事だけをやっている弁護士でもなさそうなので、反社会組織の恐ろしさを一般人よりも知っているはずですが、その半端な知識がかえって死を覚悟させなかったのかもしれません。
いつもこの場面で思い出すのが、「日本で一番悪い奴ら」という映画です。この映画も、コカインを途中で取られてしまうのですが、主人公はボコボコにされるだけです。そのタイトル通り「日本で一番」、海外は比べ物にならないほど恐ろしいなと思わされます。
見た目がいい
カウンセラーはハンサムですが、それだけではなく信頼できそうな雰囲気を持っています。その証拠に、綺麗な婚約者や、マフィアの仕事を紹介する友人がいるわけですが、端的に他人を信用させる能力を発揮しているのは、携帯電話を借りるシーンです。切羽詰まっているのを隠し、適当な嘘をついてそこらへんにいた女性に電話を貸してもらう、貸した女性も不信感など微塵もない様子ですから大したものです。
電話を貸すくらいならいいですが、伴侶や危険な橋を渡る相手としては、カウンセラーは不適格です。婚約者も友人も、見る目を誤まってしまいました。
唯一、婚約者の前で「あれ?」と思わせるのがポロを観戦するシーンです。具体的にカウンセラーがなにをしたかはわかりませんが、不誠実なことをしたことは確かです。しかし、プロポーズを受けた後では、時すでに遅しと言えます。
欲望のままに生きる女
カウンセラーも欲の多い人間ですが、マルキナ(キャメロン・ディアズ)との大きな違いは、他人の目を気にするかどうかです。マルキナは他人の目を気にするどころか人を人とも思わない、「感情に温度があるの?」なんていう人間です。
劇中では具体的に誰がコカインを横取りしたのか描かれていませんが、最終的にマルキナがおいしい思いをしているのは、ウェストリーを殺害しているところから想像できます。恋人のライナーも実質マルキナが殺したも同然ですが、利用するだけ利用した後はどうなろうと知ったことかです。
どちらがタチが悪いか
マルキナはまごうことなき悪女ですが、見るからに悪女です。危険な匂いをプンプンさせています。だから、ライナーもそれをわかっていて、覚悟の上で一人で逃げます。
一方、カウンセラーは悪いことなどしなさそうで、マフィアに加担している最中でも、あんなドラマチックなプロポーズができてしまうほど無邪気です。婚約者からしたら、急に危険が迫りあっという間に無残に殺されてしまいます。
考えてみると、カウンセラーの方が厄介な人間です。
マルキナのヒント
プールサイドのシーンで、婚約者の指輪を見ながらダイヤモンドのランクや値段についての話をしたり、「あなたの世界って不思議ね」という意味深なこと言います。マルキナからすれば、ヒントなどではなく、「こんな大きなダイヤモンドもらってなにも気にならないのね」という単純に疑問なのでしょうが、無残に殺されてしまう婚約者のことを考えると、このヒントから推理して指輪だけ持って逃げたらよかったのにと思わずにはいられません。
「悪の法則」とは
ちなみに、原題は「The Counselor」でカウンセラーまんまです。カウンセラーが右往左往する話なのでこのままでもよかったのでは?と思っていました。
しかし、マルキナがいたことを考えると、カウンセラーがバイカーを釈放させていなくても、この取引は失敗に終わっていた可能性が高いです。失敗=死なので、カウンセラーがこの取引に加担した時点で、婚約者の死は決まっていたと言っても過言ではありません。そう考えると、悪の法則という題名がしっくりきます。
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