絵柄は濃いがコメディ色の強い作品 - トクボウ 朝倉草平の感想

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トクボウ 朝倉草平

4.004.00
画力
4.00
ストーリー
3.50
キャラクター
3.50
設定
3.50
演出
3.50
感想数
1
読んだ人
1

絵柄は濃いがコメディ色の強い作品

4.04.0
画力
4.0
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
3.5

目次

ドラマ化されたコメディ色の強い作品

劇画タッチの濃い作品に定評のある高橋秀武先生の作品で、ドラマ化もされた作品です。集英社のジャンプ、ということで男性向けの内容ですが、作品全体の印象とは少し違い、コメディ色の強い作品となっています。途中、別作品(ガンダム)のオマージュ的なキャラクターも登場し、真面目な内容よりも遊び心が強調されている、といった印象です。また、ブラックジャックを意識したのか、ピノコ的な少女も登場し「あれ?迷走しているかな?」と思わせ、尻すぼみに終わってしまうのが残念でした。主人公・朝倉草平の父が死んで、そこで話が終わってしまうのは少し残念です。そこから新しいスタートにつなげて欲しかったです。

セクシーさが物足りない

男性向け漫画ということもあり、女性のセクシーなシーンはそれなりにあって、登場する女性は魅力的ではあるのですが、作者が描きたいのはおそらく男性の体で、そのせいで全体的にセクシーさが中途半端になってしまった感が否めません。主人公もかなりセクシーではあるのですが、何を考えているのかわからないキャラクターなので致し方ない、といった感じです。主人公の上司が若い女性ですが、男性の「若い美人女性上司がいたらいいなあ」という願望を叶えつつも、主人公のことが好きなツンデレ、というキャラのせいで作品全体がふわふわしてしまっているのかもしれません。主人公がラッキースケベに遭遇するシーンもありますが無反応なので、読者が余計に冷静になってしまう、という難点もあります。

刑事ものではなく「戦隊もの」

あくまで「刑事もの」の作品としてみた場合、ちょっと「?」という感じですが、ドラマで言うところの「相棒」やスーパー戦隊もの、仮面ライダーもの、として見るととてもしっくりきます。朝倉草平がヒーローの主人公、として考えると「変身しない仮面ライダー」(強い)という感じですし、その仲間たちも意外と活躍していて、お金持ちで地位もある友人が助けてくれるなど、非現実的なアプローチで楽しめます。悪を退治する、というよりも「反省させるためにお仕置きする」という形なので、愛嬌のある敵役にも愛着がわく、という感じです。日曜日の朝に放送している戦隊ものを、ちょっと大人向けで現実よりに描いた、という感じがして好印象でした。

主人公がよくわからない

良い意味でも悪い意味でも、主人公が何を考えているのかわからない、というポイントがあります。主人公に感情移入や共感ができないと、作品を楽しめない人も多いので、この作品に限っては「共感できない読者」が多いのでは?という印象です。口癖が「死にたい」ですし、死にたいと言いながらも健康マニアで体はバッキバキに鍛えています。父親は大物政治家で本人はそのことをコンプレックスに感じていますし、なんだかんだと言いながらも優秀な上、最後は身寄りのない子どもを引き取って育てることにもなります。女性にはあまり興味がなく(というか皆無?)童貞だと宣言しています。女性から見ると「こんな男性ステキ」と思うことはありますが、男性的には「いやいや、こんなやついねえよ」って感じかもしれません。何を考えているかわからないやつ、何をしたいのかわからないやつ、という人がたまにいますが、そういう人を主人公にすることによってコメディに持っていきたい反面、全く理解できない人も生まれるので、好きな人は好き、嫌いな人は嫌い、とはっきり白黒分かれる作品だと思います。

コメディとして読むべき

最初は「真面目な漫画なのかな」という感じで読み進めていくのですが、全話通して読んだ感じだと「コメディとして読むべき」な作品です。ドラマ化され、シリアスなシーンもありましたが、親子関係の残した心の傷、という重いテーマはあくまでポイントであって「これはコメディなんだ」と割り切って読んだ方がすっきりします。絵柄が濃いのも演出で、男性が読むより女性が読んだ方が楽しめる作品に思えます。男色家の青年が登場するあたりも、ボーイズラブの要素があって見所です。また、金持ちの友人が助けに来てくれるのは完全にコメディなので、シリアスさを期待しない方が読みやすいです。

結局何を言いたかったの?

コミックス全8巻を通して、結果的に「何が言いたかったのか?」という疑問は残ります。めでたしめでたしで終わったような、トクボウの仕事はまだまだ無限にあるような、朝倉草平の心の決着はついたのかどうか。このへんがはっきりしないまま終わるので(そもそも主人公がどう思っているのかがわからない)辛辣な言い方をすれば「何が言いたかったの?」という感じです。ただ、ヒーローは自分の問題が解決しようとしなかろうと戦い続ける、街を守り続ける、というのはヒーローものの定番の終わり方なので、主人公がちょっと所帯じみた感じに(ポジティブに)成長して終わる、という物語だとしたら合格点かな、という感じです。仲間との距離感も変化がないまま、ほんの少し、雀の涙ほど心を開けるようになったのなら、彼にとっては大きな一歩だったと言えるのかもしれません。

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