羽川に共感し、叫喚した
人に頼ることができない、は強さではない
物語シリーズの中でも三本指に入るくらい好きです。羽川のことが気になっていたころ、戦場ヶ原と出会う前の阿良々木の話。
羽川のことを好き、なのかもしれないと感じていた阿良々木が、街で羽川に会うところから物語はスタートします。自身の家庭問題を阿良々木に打ち明けた羽川のことを阿良々木は『気持ち悪い』と感じるのですが、わたしはその気持ちがなんとなくわかってしまい、素直に辛いと思いました。
誰かを悪口なんて絶対に言わない羽川が、相手を悪く言わないよう一生懸命に言葉を選んで話す姿は素直に辛いです。明らかに相手が悪いのに、まるで自分が悪いみたいに話すのです。
この気持ちはわからない、という方がきっと多いと思いますが、私はなんとなく共感してしまいました。(それ故にわたしは羽川自体があまり好きではないです…同族嫌悪かな…)そもそも人に悩みを話すことですら、羽川にとっては非常に難しかったと思います。
その心理的に非常に辛い描写からの、コミカルなシーンがこのアニメの見やすさかなとも思います。
羽川の真意
人は誰でも心の中に黒い部分がある、と私は思っています。
それが具現化されたのがブラック羽川であるのならばこいつ相当やばいやつだな…と見ながらずっと思っていました。実際私も表でにこにこしていても、裏では人のことを恨んだり、憎んだり、泣くほど悔しい思いをしたり…それが具現化されてしまったら生きていないくらいには(笑)
わたしがこの作品の中でかなり好きなシーンなのですが、羽川の家には羽川の部屋がないことを確認し、家に戻って阿良々木が泣き叫ぶ場面。声を上げて泣く神谷さんの演技、圧倒されました。同時に羽川、もうだめだろ、と心の中で叫ぶシーン、最高でした。羽川がそれをずっと我慢していたのかと思うと、何とも言えないもやもやした気持ちになります。こういう暗い展開の間にちょこちょこコメディ要素を混ぜてくるところは西尾維新作品、さすがです。
心身ともに自分がかなりの痛手を負っているというのに、それでも羽川をなんとかしたいと思う阿良々木はこの時点でかなり羽川のことが好きなんだなぁと、化物語を既に視聴済みの状態で見るとなんとなく切なくなります…。初めてできた友達が、特別であるという感情以上の何かが見えるたびにどうにも…(このあとの猫物語白、も含めて)
阿良々木の「羽川のことを思うと、胸がはち切れそうなんだけどな」という発言が、吸血鬼になる以前の阿良々木くんからは考えられなくて、それもまた、どうしようもなく切ないですね…
羽川自身のストレスをブラック羽川が全て発散するまで放っておいては、羽川とさわり猫は一体化してしまう、時間もなく、戦略もない中で、阿良々木は悩みます。
「羽川のために死にたいって思ってるんだもん」の発言には涙が出ました。誰かのために死にたいと思うことなんて、一生に一度あるかないか、それほどの気持ちで、相手に向き合おうと頑張る阿良々木の姿は本当に(彼氏にするなら)理想的だなと思いました。多少重いですが。
正しいことが罪
忍野から羽川の父親とのエピソードを聞いたとき、忍野は最初の阿良々木と同じ「気持ち悪い」という感情を抱きました。人に理不尽に殴られて「だめだよ」だなんて言える人間はわたしも頭がおかしいと思います。そして、忍野の言葉は『正しい』と思います。羽川が我慢し続けたこと、正しくあり続けようとしたこと、自分の本当の気持ち、意見を何も言わなかったこと、全て羽川が悪いです。嫌なことは嫌だと言わないと人には伝わらない、怒らなければ、そういう人間だと思われる。なぜ彼女は15年間もずっと我慢し続けたのか、いい子であろうと一生懸命だったんだなと辛くなります。
しかしそれが仇となってしまった。正しすぎることで、正しくないことをより一層自覚させられ、それが爆発してしまったのが彼女の父親です。
そしてブラック羽川と阿良々木の直接対決。怪異に取りつかれて暴れていたと思っていたのに、実は羽川自身が自分の意志で暴れていた、と視聴者側には初めて告げられました。しかも阿良々木はそれに最初から気が付いていた、と。羽川のことを1番良く見ていて、1番の理解者でありたいと思っていた阿良々木だからこそ、だなぁと感じて心臓が痛くなります。
それでも、それがお前だから受け入れ、頑張って生きていくしかない、と阿良々木に言われ、これ以上何をがんばれというのかと訴える羽川の言葉は心に強く刺さりました。いつも頑張っているのに、これ以上何を頑張ればいいのか、どう頑張ればいいのか、そもそも頑張るってなんなのか、わたしも分からなくなることがあります。このあたりから涙が止まりませんでした。そういう自分を受け入れてくれる人が近くにいるのに羽川はなぜ頼ることができないのかなと思いましたが、きっとわたしもなかなかできないだろうなと思います。。。(やはり性格だけは羽川に似てるから嫌だ…)
羽川に体を引き裂かれる阿良々木のシーンは衝撃的でした。(映画傷物語の時くらいにはダイナミックで素晴らしい作画でした…)その後の二人の対話、それでも羽川のことを好きでいる阿良々木は自己犠牲が強い偽善者かもしれませんが、それでもいいかなと思いました。
そして忍が怪異殺しにやってきます。どんなときもやっぱり最後に守ってくれるのは忍なんだなぁ…素晴らしい関係だと思います。この時点で二人は分かり合っていませんが(笑)死なれたら困るという理由だけで体を張ってお互いを守れる関係良いと思います個人的に。
最終的に羽川への気持ちをなかったことにする阿良々木はどうしてそうしたのか。
個人的な解釈になりますが羽川が一番つらいときに頼ってくれたのは自分ではなかったから、なのかなあと思いました。一番つらいとき苦しいときに、好きな人にはそばにいてほしいと思ってほしいですよね…
『初恋ではない何かは失恋した』
伝えていない恋は、失恋と呼ぶのか、と今でもこれを見ると考えます。わたしは言葉にしなければ人には真意は伝わらないし、好きだと言わなければ、それは恋や愛にはならないのかなと思います…。少しもやもやして終わるこの終わり方…。それもまたよいと思いました。
物語シリーズで私の中の最強ヒロインは戦場ヶ原ひたぎなので、過去のこういうほかの女性とのストーリーは少しもやもやしたものを感じるます。が、これがあったからこそ、真逆である戦場ヶ原に、今惹かれているのかなと思うと、羽川に感謝ですね。
またOP、ED共に今回の物語に非常に合っていました。この曲を聴くたびにこの物語を思い出せる、お気に入りの2曲です。
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