ちびまる子ちゃんの新聞連載版四コマ - 4コマ ちびまる子ちゃんの感想

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4コマ ちびまる子ちゃん

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ちびまる子ちゃんの新聞連載版四コマ

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文章力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
4.9

目次

新聞連載らしく、季節や世相の反映も

2007年から、中日新聞をはじめとする地方新聞11紙に4年半連載されていた四コマ版のちびまる子ちゃんである。

本来評価は満点としたいところであったが、コミックス化された際に2巻までがモノクロで、3巻以降がカラーになっているため、全巻カラーだとなおよかったという意味で、演出を減点させていただいた。

舞台はアニメや集英社の少女雑誌「りぼん」に掲載されていた本家のちびまる子ちゃん同様、昭和40年代後半が舞台であるが、新聞連載のため、季節や行事に応じたネタや、最近の社会問題であるオレオレ詐欺が取り上げられるなど、現代のネタを盛り込んだ回もある。

各キャラクターの性格は四コマでも生かされており、万人受けする無難な四コマというよりは、さくらももこさんらしい皮肉ネタや、まる子の怠けっぷりも相変わらずだが、誰でも笑えてしまう構成担っている点は秀逸と言える。

また、新聞は毎日目を通すという習性があることから、四コマ漫画であるにもかかわらず、続きネタが多く取り上げられ、昨日の落ちのその後がまたネタになっているというストーリー性を感じる展開もある。カラーも子供の塗り絵のような平坦な色彩がむしろ味があり、温かみを感じる。

毎日連載が楽しみになるような構成になっており、これだけの濃い面白さを四コマという形式で四年半も連載されたさくらさんの漫画家としての才能を改めて感じる作品である。

本家とは違った設定に遊び心も

基本はどのキャラも、前述同様本家原作やアニメと相違ないものの、恋多き乙女、冬田さんが四コマ版では、イケメンの大野君ではなく卑怯の藤木に好意を寄せている点が異なっている。

まる子の級友の藤木は、級友に卑怯呼ばわりされパッとしないキャラであるが、四コマで冬田さんに思いを寄せられているだけではなく、本家原作でも友蔵の友人の孫であるみどりちゃんにも好かれている。さらには、スピンオフ作品「永沢君」では、花輪君に思いを寄せていた美人級友、堀こずえまでが藤木に恋をするようになるなど、実はちびまる子ちゃんでは花輪君に次ぐモテキャラだという事が判明する。

堀こずえとは甘酸っぱい状態で思いを伝えることなく終わってしまうものの、藤木の場合好かれた女子に猛烈アタックを受けて困惑するというケースが多く、困った時に相談する友達がまる子や永沢といった恋愛に疎い友達であるために、余計に窮地に陥ることが多い。

こういった状況を四コマで落ちをつけつつ紹介してくれるのは、ファンにとっては有難い限りである。

アニメでは相変わらず冬田さんは大野君が好きという展開のままで、四コマの展開のように大野君から心変わりする展開にはなっていないが、まさか冴えない男子に心変わりするという展開は、裏展開を知ったような味わい深さと、こういうことあるよね、という共感を感じる。

著者さくらさんは、2017年にちびしかくちゃんというセルフパロディの漫画のコミックスも発行しているが、元々遊び心のある漫画家なので、色々な作品の別展開を知ることで、原作やアニメがもっと楽しめるように工夫されているように思う。

どの世代にも共感される四コマ

新聞連載というのは、読み手の年齢層の幅も大きい。しかし、だからと言って、無難でパンチがない内容だと、面白みが無くなってしまうのも事実だ。かつて新聞連載の四コマで人気があったのは、今や国民的アニメになっている長谷川町子氏のサザエさんを筆頭に、朝日新聞のサトウサンペイ氏のフジ三太郎、園山俊二氏のペエスケなどがある。

サザエさんはカツオのいたずらやサザエさんの信じられないようなドジなどを大胆に扱うことで、どの世代にも笑いをもたらした。フジ三太郎もペエスケも、職場や家庭での出来事をメインに笑いを誘う展開になっており、グラマラスな女性が出てくるなど、購読層の多くを占める男性を意識したユニークな描写も人気の秘訣だろう。ペエスケにいたっては、ペエスケが飼っていたペットのガタピシという犬が大人気になり、アニメ化や商品化にまで至った。

地方紙では、今でも静岡新聞にかつて連載されていた、吉本どんど氏のこつぶちゃんという漫画は、コミックス化を要望する声がネット上にも挙がっている。どの作品も、どこか一癖ある、というのが共通だ。

ちびまる子ちゃんは、元々視聴率が良い日曜の国民的アニメだったため、読み手が土台としてキャラクターをよく知っていたのも人気の秘訣だろう。まる子の学校や家庭でのトラブル、父ヒロシやまる子の母親のご近所トラブル、中年男同士の切ない愚痴、季節を感じる温かいネタなどは、どれも一癖ありつつ、共感が持てるものばかりである。四コマからビッグネームになったサザエさんに対し、元々ビッグネームだったちびまる子ちゃんが四コマに進出してきたという逆パターンなのも、実は媒体的には対称的なのだ。

しかし、万人受けする作品だからこそ、新聞の四コマとしてふさわしかったとも言え、こうしたメジャーアニメを四コマに逆抜擢することは、新聞の漫画としては目の付け所が良いと言わざるを得ない。

家族や級友など、周囲の人との会話の大切さ

まる子はよく何でも両親や祖父母に報告をする方だと思うが、四コマちびまる子ちゃんを読むと、家族の会話の重要性を改めて感じる。

好奇心旺盛な子供のせいか、疑問に思ったことは家族に率先して尋ねたり、悩んだことはどんどん愚痴る。そのために怒られることもあるが、のびやかに育っているまる子を見ると、新聞の紙面で現代の家族に忘れられがちな、三世代が同居する家族の良さや、適度に干渉しあうことも悪くないという温かさを感じる。

新聞のまる子のネタで、大笑いし、その話で家族間で盛り上がることが出来そうな、話題提供的な役割を持った作品でもあるように思う。

この作品では、舞台が昭和40年代後半のため、当然のことながら携帯電話などの文明の利器は出てこないが、会話で人と関わることの面白さだけで全部ネタが成立している。家族だけではなく、学校での級友との関係も、固定電話と学校での会話だけが関わり合いの手段なのだ。

佐々木のじいさんをはじめとして、ご近所の大人からも人間関係を学んでいた時代。子供を家族、学校、地域が、温かく見守っていた時代なのだと改めて感じる。季節の流れの中で、読者と一緒に時を刻む新聞連載だからこそ、懐かしさと共に改めて子供と話してみよう、親と話してみよう、誰かと話してみよう、そんな気にさせてくれる。気まずい対人関係や、皮肉を交えた部分はあるものの、すべてをいい意味で笑いに変えているこの作品の様な温かさがあれば、職場や学校でのいじめやパワハラなど、本当は無縁なのではないか?とも思える。

色々なキャラのそれぞれの時間

ちびまる子ちゃんのアニメや本家原作では、まる子以外のキャラクターが取り上げられ、まる子とかかわりを持たない部分での生活はある程度描かれているが、最終的には主人公のまる子を中心に話が展開していく構成になっている。しかし、四コマ版では、最終的にまる子が各キャラクターのエピソードに一切かかわらないことが多く、それぞれのキャラクターの持ち味や考え方が、深く掘り下げられている。まる子が出ない回でも、強力な個性的キャラの話だけで爆笑できるのは、アニメからの逆パターンで四コマ化された強みであろう。これだけ多くのキャラクターが出てくる新聞四コマも、珍しいのではないだろうか。

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