正反対な双子の姉妹
つい見てしまった
私はこの手のストーリーがもともと苦手でした。何とか見れるのは、子供向けの妖怪ものか『マスターモスキートン99』でした。この『BLOOD+』が放送されていた土曜日6時というと、この前まで『機動戦士ガンダムSEEDDESTINY』を見ていたからです。最終回を見たというのに勘違いして見たのが『BLOOD+』でした。最初は怖そうだと思いましたが、作画が綺麗だったのでつい見てしまいました。そして、確かに怖いシーンも結構あるのですが、作画と演出が素晴らしくて、気が付くと毎週欠かさず見ていました。ただ、翼手が暴れているシーンはやはり怖くて、大抵クッション越しでしたが(笑)。しかし、それぐらいの魅力がこの作品にはあったのです。小夜やハジの戦う姿はハリウッド映画のようだったし、OPやEDにはあらゆるアーティストの方が楽曲提供していて、それら全て作品とよく合っていました。それに、架空の話しの中にも実際の歴史が混ざっていたり、「ジョエルの日記」や「シュヴァリエ」という謎めいた言葉にも惹かれました。最終回を見終わった後、続編を期待している自分が居ました。
これは、家族のドラマです
この作品は小夜とハジが異形の魔物である翼手をその宿命がゆえに退治して歩いているという印象が強いかも知れませんが、根底にあるのは「家族」なのです。記憶喪失となった小夜を娘として迎え入れた宮城ジョージは、確かに最初は「赤い盾」の任務だったのでしょう。でも、次第に自分の息子達であるカイやリクと同じように小夜を大切にしていました。出来れば、彼女がその能力を使う日が来なければ良いのにと思った事でしょう。だから、戦いを拒む小夜を身を呈して守ったのです。最後は翼手になる前に小夜の手で人生を終えましたが、彼は満足そうでした。愛する子供達に見守られながら、安堵にも似た表情を浮かべていたのです。そして、小夜を異性として意識していたカイもまた、兄弟としての愛を持っていました。ディーヴァによって瀕死となったリクを前に彼は「たった一人の弟なんだ」と訴えます。その悲痛な表情は彼がどれだけリクを大切に思って来たかを物語っています。その想いは小夜も同じだったと思うんです。短い時間だけれど、兄弟として育ったリクを失いたくなかった筈なんです。ですが、小夜のシュヴァリエとして蘇った事でリクはディーヴァによって殺されます。その時に小夜は、今までにない程の怒りをディーヴァに感じたはずです。今までの明るい表情は見られなくなり、全く笑わないクールな少女へと変貌してしまったのです。そして迎えた最終決戦の時、小夜は思わぬ行動に出ます。子供を生んだ事で能力が衰えたディーヴァの腕が崩れ掛けた時に、小夜は咄嗟にディーヴァの腕を元に戻そうとします。あんなに、あんなに憎んでいたのに。それなのに小夜は妹であるディーヴァを失いたくなかったのです。そして、ディーヴァもまたそんな姉の姿に初めて妹としての気持ちが沸いたのかも知れません。でも、時は遅すぎたのです。双子の姉妹は結局笑顔で向き合う事は出来ませんでした。出来ませんでしたが、それでも二人の間には確かに家族としての「愛」があったのだと思いたいです。小夜が、ディーヴァの残した双子の姉妹を守ろうとした時に、ここにもまた家族の「愛」が生まれたのだと思いました。
なぜか可愛く見える
そう。この作品の中で小夜の次に重要な人物。それは、ハジですっ。長めの黒髪を後ろで束ね、無愛想ですがチェロの腕前は一流で、細身の体型からは想像も出来ない程強い彼の存在はかなり魅力的です。そして、その外見からは伝わりにくいのですが、彼はとても「可愛い」のです。幼い頃に小夜と出会ったハジはずっと一途に小夜を想って来ました。シュヴァリエとなってからも、彼女の盾となり、心の支えとなりながらずっと恋心を抑えて来たのです。これだけでも彼がどれだけ純粋なのか分かりますが、一番可愛いと思ったのは彼が翼を閉まったままだったという事です。時として、空を飛べる事はかなり重要です。敵から逃げる時もそうですが、攻撃する時も空を飛べればかなり有利になっていたはずなんですっ。はずなんですが、彼はそうしませんでした。不思議に思った小夜が尋ねると、ハジが答えます。今まで翼を出さなかったその理由は、初めてハジの翼を見た小夜が怖がったからというものでした。「えーっ。それが理由なのっ?」と思わずツッコミを入れたくなったのですが、それ以来彼が可愛く見えて仕方がないのです。最後の「なんくるないさ」という沖縄弁も精一杯微笑んでいて、何ていじらしいんでしょう。再び長い眠りに着いた小夜ですが、おそらくハジは彼女の側から離れる事はないのでしょう。きっと街角でチェロを演奏しながら、いつの日か再び目覚める小夜を待ち続けるのだと思います。そして、その時には翼手との戦いはなく、二人が普通の男女として幸せに微笑んでいる事を望みます。
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