疫病神シリーズ最高傑作。 - 国境の感想

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国境

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疫病神シリーズ最高傑作。

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ストーリー
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演出
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目次

黒川博行さんが暗殺リストに載ってないか心配。

この作品は読んだ方ならほぼみなさんご存知と思いますが、大阪の胡散臭い建設コンサルタントの二宮啓之と、同じく大阪二蝶会のイケイケヤクザの桑原保彦の二人が繰り広げる超ド級エンターテイメント疫病神シリーズの二作目です。アクション、なおかつ笑える、ドラマ・映画化もされた大人気シリーズ。私は最新作を除く全シリーズを読みましたが、この国境は二作目にして個人的にはシリーズ最高傑作。この作品を超えるシリーズ作はもう今後出てこないのではと思う位です。黒川博行さんの他の作品もかなり読破していますが、全部ひっくるめてもこの作品が一番好きですし、一番読み返した作品でもあります。

この小説の舞台は北朝鮮。その実、北朝鮮と関西半々位なんですけど、北朝鮮の部分が強烈すぎて大半が北朝鮮舞台だったような錯覚に陥ります。一般人の私は北朝鮮というだけで怖くて、とても自分で行きたいとは思いませんが、汗、小説の中で覗き見してみたいという好奇心は満杯で興味深々でした。そして読みながら、思ったのはこれは半端無い内容だな・・・という事で、しかも北朝鮮の状況に対して歯に衣を着せないセリフを主人公達に言わせていて、読みながら、

黒川博行さん、こんな事書いて大丈夫なのかなな。黒川さんだけでなく出版社も。汗。

と心配に思う位、その内容は深く、とても詳細に至るまで掘り下げられてて書かれています。無断でどこにも出歩けない、一般常識が全く通じない国で、建設コンサル二宮とイケイケヤクザ桑原が詐欺師を追って大追跡劇、大暴れする訳ですが、もう小説の中の話だとは分かっていても、読んでるだけでハラハラドキドキしっぱなしでした。同時に、盗聴されていたらその場で処刑されそうな事を二人とも言うんですけど、それ読んでこっそりスッキリしてしまう自分がいました。(同じ思いをもって読まれた方多いんじゃないでしょうか?)

北朝鮮で印象の残ってる場面はあまりにもありすぎて書ききれませんが、窓も無い民家の軒先でとうもろこしそばを食べるシーンが何故か凄く心に残りました。あまりにも自分は今、食べ物を粗末にしすぎてるのではないかという強い罪悪感があるからでしょう・・・。

歯抜けの助っ人、リ・ウォンホ。

この物語にはさすが黒川博行さんと言える、その登場人物の多彩さとキャラクターの深さと個々の個性の面白さが満載で、読みながらどんどん主人公と言わず登場人物の誰彼に感情移入してしまうのですが(実際、そういう登場人物に感情移入できる小説て案外少ない。)、この物語ではこの人、

「おいおい、こんな爺さんがガイドかい」

そう桑原に言われる、見た目はどうであれ最高に頼りになる北朝鮮での助っ人、中国人行商人のリ・ウォンホ老人が何と言ってもめちゃくちゃ面白い。二宮・桑原の関西人コンビの掛け合いもいつも絶品だけど、この中国人行商人助っ人ガイドのお爺さんが入るとトリプルでさらに面白さ倍増。シリーズ通してもとても印象に残ったキャラクターの一人でありました。詐欺師を追って北朝鮮に密入国する二人を手助けするのですが、見た目は絶頂部が殆どハゲていて、上の前歯は二本しかなく、とても貧相なんですが、日本語が話せます。

「ぼくには孫が三人もいるんですよ、そんなおじいさんには見えないでしょう」

と桑原に聞き、

「充分に見えるがな」

と言われしょんぼりしてしまいます。しかし、このお爺さんが凄い男気を見せて北朝鮮の大捕り物劇で二人を最後の最後まで助け、そして仁義の男桑原に助けられ、窮地を乗り切り無事生き残り、大阪北新地のキャバクラで二宮と三人再会するラストシーンは思わず、良かった!!!と涙が出たくらい!最後の「酒より女ですよ。」のオチも最高。最後の最後まで笑わせてくれる手腕は凄い。(おじいさんを褒めてるのか、黒川さんを褒めてるのか良く分かりませんが。)

あと他にも北朝鮮の突撃隊の親玉・黄と大阪ヤクザの桑原のケンカ、友情(?)、お金の絡んだ助け合い(笑)なども物語に色を添えていましたが、キャラの深さも桑原との掛け合いも、おじいさんには負けます。笑。

真打登場、豊田商事の黒幕希代の詐欺師と仁義なき戦い。

あと、このお話の核には一人の大物詐欺師・石井、ことホ・ムンポが大きく関わり、複雑に幾重にもかけられた詐欺の罠を仕掛けていて、さすがのイケイケ桑原も騙されてしまいます。その強敵、海千山千の天才極悪詐欺師が元豊田商事の残党の生き残りでした。

なるほど・・・。

と私世代以上の人の多くは思った事でしょう。あの事件は凄く印象に残っています。普通騙されるかな!?って思うでしょう。でも、それを騙してしまう詐欺師、騙しのプロの手腕って半端無いんだと思います。見かけもごくごく普通だったり。(この石井のように。)幸いにも私は騙された事が無いけど、そういう相手に絶対騙されないという自信は無いかも・・・。

この小説の中でも幾重にも仕掛けられた騙しの付箋の数が凄い。ヤクザを騙すのだから、これ位大がかりな詐欺でなくてはとても騙せない訳ですが、読んでても、微塵も騙されてると思わずにこの石井がここまで絡んでるとは思わなかったですからね。笑。

これを書いてたらまた、最初から読み返したくなりました。笑。

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